ビジネス特集
【投資動向】戦略的互恵関係時代の日中ビジネス 中国企業の対日投資も活発化へ
日本貿易振興機構(ジェトロ) 北京センター 副所長 真家陽一 氏
日本貿易振興機構(ジェトロ) 北京センター 副所長 真家陽一 氏

日本貿易振興機構(ジェトロ) 北京センター 副所長 真家陽一 氏
ここに注目!
M&Aも増加、対中投資の分野・形態ともに拡大
メイドインジャパンの「品質と安全」が再評価
日中両国は「戦略的互恵関係」の構築に向けてその一歩を踏み出している。2007年12月、日中の経済閣僚が一堂に会して「日中ハイレベル経済対話」の初会合を北京市で開催したことは、その動きを象徴するものともいえる。今後の日中ビジネスはどのような分野で、いかなる展開を見せるのか。改革・開放政策に転じてから30周年、08年の中国商流を展望する。
リスクヘッジ図り中国以外への投資分散も顕著に
現在、中国政府は「第11次五カ年規画」(06〜10年)において「外資利用における質の向上」を打ち出し、外資利用を通じて国外の先進技術、管理経験、ハイレベル人材の導入を図り、国内の産業構造と技術水準を向上させることを謳う。
こうした状況の下、中国政府が外資に対する規制を強化したり、産業別に選別したりするといった動きが現れており、外資が無条件で優遇される時代は終わりつつある。加えて、中国では投資コストや事業運営リスクが高まっており、リスクヘッジを図る意味合いから、インドやベトナムなどに分散投資を行う企業も増加傾向にある。
特に08年年初からは、企業所得税法によって外資に対する優遇税制は基本的に廃止される。労働契約法も施行され、勤続年数に応じた経済補償金支払いの義務付けなど、労務コストのアップが不可避となる。さらに8月1日からは独占禁止法が施行され、外資によるM&Aが国家安全に関わる場合には、別途、「国家安全審査」が行われることになる。
M&Aも増加、対中投資の分野・形態ともに拡大
メイドインジャパンの「品質と安全」が再評価
日中両国は「戦略的互恵関係」の構築に向けてその一歩を踏み出している。2007年12月、日中の経済閣僚が一堂に会して「日中ハイレベル経済対話」の初会合を北京市で開催したことは、その動きを象徴するものともいえる。今後の日中ビジネスはどのような分野で、いかなる展開を見せるのか。改革・開放政策に転じてから30周年、08年の中国商流を展望する。
リスクヘッジ図り中国以外への投資分散も顕著に
現在、中国政府は「第11次五カ年規画」(06〜10年)において「外資利用における質の向上」を打ち出し、外資利用を通じて国外の先進技術、管理経験、ハイレベル人材の導入を図り、国内の産業構造と技術水準を向上させることを謳う。
こうした状況の下、中国政府が外資に対する規制を強化したり、産業別に選別したりするといった動きが現れており、外資が無条件で優遇される時代は終わりつつある。加えて、中国では投資コストや事業運営リスクが高まっており、リスクヘッジを図る意味合いから、インドやベトナムなどに分散投資を行う企業も増加傾向にある。
特に08年年初からは、企業所得税法によって外資に対する優遇税制は基本的に廃止される。労働契約法も施行され、勤続年数に応じた経済補償金支払いの義務付けなど、労務コストのアップが不可避となる。さらに8月1日からは独占禁止法が施行され、外資によるM&Aが国家安全に関わる場合には、別途、「国家安全審査」が行われることになる。

(出所) 商務部「中国外商投資報告」2007年版よりジェトロ作成
商務部によれば、日本の対中投資は06年末までの累計で580億ドルと、香港地区に次ぐ第2位である。香港からの投資は、同地区の企業のみならず、さまざまな多国籍企業によることを考慮すれば、日本は実質的に第1位の対中投資国・地域と言ってよい。この膨大な投資ストックを生かせることが、対中投資のメリットの1つに挙げられる。
対中ビジネス、新たなステージへ
しかし、日本企業にとって、中国が対アジア投資の中心である状況に変化はない。(1)相当の資本投下を行い生産面での相互補完関係を構築している、(2)市場の拡大に対する期待も高い、などが理由だ。ジェトロが06年11〜12月に行った「日本企業の海外事業展開に関するアンケート」 (有効回答数729社、有効回答率28・7%)で、「海外で今後(3年程度)拡大する機能」を国・地域別に聞いたところ、販売、生産、研究開発、地域統括、物流などいずれも中国の割合がアジアで最も高かった。
個人所得の増加に伴い、中国の市場規模は急速に拡大している。総世帯数の約10%を占めると推測される都市部における高所得購買層の06年の世帯平均月収は約7,600元と、5年前の2.3倍に増えた。世帯数は約1,900万世帯、人口換算で約5,000万人に達する。日本企業にとってターゲットとなり得る消費者層は着実に増大している。
日本企業の対中ビジネスは今、新たなステージを迎えている。一つは投資分野の拡大。日本の対中投資はこれまで電気・電子や自動車などの製造業が牽引してきた。しかし、製造業向けは、現在ほぼ一巡し伸び悩みの傾向をみせている。他方、非製造業向けは第三次産業向けが顕著に増加しており、投資先分野のシフトが鮮明になりつつある。
事実、日本の対中投資を財務省統計(07年上半期)でみると、製造業向けが前年同期比28.2%減の2,334億円に減少する一方、非製造業向けは1.8倍の1,095億円と大きく増加している。特に、金融・保険業が4・9倍の521億円、サービス業が1.7倍の 99 億円、不動産業が8.4倍の 92億円と大きく増加。卸売・小売業も11.9%増の300億円と堅調に推移している。今後は、省エネルギー・環境、農業、アウトソーシング、あるいは日中の文化交流にも資するコンテンツといった業種が新たな有望分野となることが期待される。
もう一つが投資形態の幅の広がりである。日本企業の対中投資は、従来はグリーンフィールド型が中心であったが、最近では資本参加を含むM&A型の増加が目立つ。この背景には、急速な経済成長が続く中国において、M&Aを通じて中国企業の経営資源を有効に活用し、短期間で販売ネットワークや生産拠点を構築し、ビジネス拡大を狙うという日本企業の経営戦略がある。 M&A関連サービスを提供するレコフによれば、06年の日本企業による海外企業のM&A(IN―OUT)は米国(136件)に次いで中国が第2位(38件)となっている。
今後の日中ビジネスを展望する時、改めてキーワードとなるのが「品質と安全」だ。中国で生産された製品の品質や食品の安全性に対する関心が中国人の間でも徐々に高まっている。「クオリティーは良いが価格が高い」との批判もあった日本製品への評価、あるいは中国人の意識があらゆる分野で着実に変わりつつある。投資環境の変化の中で、日本企業が提供する「品質と安全」は事業展開上の強みになるであろう。
しかし、日本企業にとって、中国が対アジア投資の中心である状況に変化はない。(1)相当の資本投下を行い生産面での相互補完関係を構築している、(2)市場の拡大に対する期待も高い、などが理由だ。ジェトロが06年11〜12月に行った「日本企業の海外事業展開に関するアンケート」 (有効回答数729社、有効回答率28・7%)で、「海外で今後(3年程度)拡大する機能」を国・地域別に聞いたところ、販売、生産、研究開発、地域統括、物流などいずれも中国の割合がアジアで最も高かった。
個人所得の増加に伴い、中国の市場規模は急速に拡大している。総世帯数の約10%を占めると推測される都市部における高所得購買層の06年の世帯平均月収は約7,600元と、5年前の2.3倍に増えた。世帯数は約1,900万世帯、人口換算で約5,000万人に達する。日本企業にとってターゲットとなり得る消費者層は着実に増大している。
日本企業の対中ビジネスは今、新たなステージを迎えている。一つは投資分野の拡大。日本の対中投資はこれまで電気・電子や自動車などの製造業が牽引してきた。しかし、製造業向けは、現在ほぼ一巡し伸び悩みの傾向をみせている。他方、非製造業向けは第三次産業向けが顕著に増加しており、投資先分野のシフトが鮮明になりつつある。
事実、日本の対中投資を財務省統計(07年上半期)でみると、製造業向けが前年同期比28.2%減の2,334億円に減少する一方、非製造業向けは1.8倍の1,095億円と大きく増加している。特に、金融・保険業が4・9倍の521億円、サービス業が1.7倍の 99 億円、不動産業が8.4倍の 92億円と大きく増加。卸売・小売業も11.9%増の300億円と堅調に推移している。今後は、省エネルギー・環境、農業、アウトソーシング、あるいは日中の文化交流にも資するコンテンツといった業種が新たな有望分野となることが期待される。
もう一つが投資形態の幅の広がりである。日本企業の対中投資は、従来はグリーンフィールド型が中心であったが、最近では資本参加を含むM&A型の増加が目立つ。この背景には、急速な経済成長が続く中国において、M&Aを通じて中国企業の経営資源を有効に活用し、短期間で販売ネットワークや生産拠点を構築し、ビジネス拡大を狙うという日本企業の経営戦略がある。 M&A関連サービスを提供するレコフによれば、06年の日本企業による海外企業のM&A(IN―OUT)は米国(136件)に次いで中国が第2位(38件)となっている。
今後の日中ビジネスを展望する時、改めてキーワードとなるのが「品質と安全」だ。中国で生産された製品の品質や食品の安全性に対する関心が中国人の間でも徐々に高まっている。「クオリティーは良いが価格が高い」との批判もあった日本製品への評価、あるいは中国人の意識があらゆる分野で着実に変わりつつある。投資環境の変化の中で、日本企業が提供する「品質と安全」は事業展開上の強みになるであろう。
日中間の投資は双方向の時代へ
他方、今後注目されるのは、中国企業による対日投資の動きである。これまでの日中の投資関係は、日本企業の対中投資を主体とした、いわば「一方通行」の関係であり、中国企業の対日投資は極めて少ない状況にあった。しかし、中国政府の対外直接投資に対する規制緩和などを背景に、こうした流れに変化が生じ始めている。中国側の統計によると、中国企業の対日投資は、金額的にはまだ小規模なものの、04年が1,530万ドル、05年が1,717万ドル、06年が3,949万ドルと増加基調にある。
業種別では、卸売・小売、通信、ソフトウエアなど非製造業分野の投資が増加傾向にある。例えば、中国でも知名度の高い校弁企業(大学が設立した企業) の北大青鳥(北京大学系)や同方股? (清華大学系)が、日本でのソフトウエアの受託開発などを目指して進出している。06年4月には、中国第2位の固定通信会社・中国網通が東京に日本法人を設立。同社は、日中間の通信回線の逼迫が予想される中で、同社所有の日中間国際回線を、対中ビジネスを展開する日本企業などに活用してもらうことを狙っている。
グローバル化の進展の中で、日本が経済成長を持続するには、海外からの投資を促進し、新たな技術や革新的なノウハウ等を取り込んでいくことが必要である。有力な中国企業の対日投資により、日本経済の活性化が促進されることが期待される。
加えて、中国企業による日本での株式上場という新たな動きも出ている。07年4月には、中国においてテレビ番組情報ガイドチャンネルの運営などを営む「アジア・メディア」が東証マザーズ市場に上場。同年8月には、中国で環境ビジネスを営む「チャイナ・ボーチー・エンバイロメンタル・ソリューションズ・テクノロジー(ホールディング)」が東証第1部に上場を果たした。いずれの市場においても、中国本土企業としては初の上場となった。
北京の金融関係者によると、日中関係の改善などを背景に、中国企業が海外上場先の選択肢として、東証を検討するようになってきたとの声もある。これらの上場が呼び水となり、中国本土企業の日本での上場が今後活発化していくことも予想される。
他方、今後注目されるのは、中国企業による対日投資の動きである。これまでの日中の投資関係は、日本企業の対中投資を主体とした、いわば「一方通行」の関係であり、中国企業の対日投資は極めて少ない状況にあった。しかし、中国政府の対外直接投資に対する規制緩和などを背景に、こうした流れに変化が生じ始めている。中国側の統計によると、中国企業の対日投資は、金額的にはまだ小規模なものの、04年が1,530万ドル、05年が1,717万ドル、06年が3,949万ドルと増加基調にある。
業種別では、卸売・小売、通信、ソフトウエアなど非製造業分野の投資が増加傾向にある。例えば、中国でも知名度の高い校弁企業(大学が設立した企業) の北大青鳥(北京大学系)や同方股? (清華大学系)が、日本でのソフトウエアの受託開発などを目指して進出している。06年4月には、中国第2位の固定通信会社・中国網通が東京に日本法人を設立。同社は、日中間の通信回線の逼迫が予想される中で、同社所有の日中間国際回線を、対中ビジネスを展開する日本企業などに活用してもらうことを狙っている。
グローバル化の進展の中で、日本が経済成長を持続するには、海外からの投資を促進し、新たな技術や革新的なノウハウ等を取り込んでいくことが必要である。有力な中国企業の対日投資により、日本経済の活性化が促進されることが期待される。
加えて、中国企業による日本での株式上場という新たな動きも出ている。07年4月には、中国においてテレビ番組情報ガイドチャンネルの運営などを営む「アジア・メディア」が東証マザーズ市場に上場。同年8月には、中国で環境ビジネスを営む「チャイナ・ボーチー・エンバイロメンタル・ソリューションズ・テクノロジー(ホールディング)」が東証第1部に上場を果たした。いずれの市場においても、中国本土企業としては初の上場となった。
北京の金融関係者によると、日中関係の改善などを背景に、中国企業が海外上場先の選択肢として、東証を検討するようになってきたとの声もある。これらの上場が呼び水となり、中国本土企業の日本での上場が今後活発化していくことも予想される。
真家陽一 氏(まいえ・よういち)
日本貿易振興会(JETRO)北京センター
北京市建国門外大街甲26号 長冨宮弁公楼7003室
[電話] 010-6513-7077
[FAX] 010-6513-7079
[URL] http://www.jetro.go.jp
銀行系シンクタンク等を経て、2001年日本貿易振興会(当時)に入会。海外調査部中国北アジア課上席課長代理を経て、04年より現職。
財務省財務総合政策研究所・中国研究会委員(02年10月〜04年3月)などを歴任。
日本貿易振興会(JETRO)北京センター
北京市建国門外大街甲26号 長冨宮弁公楼7003室
[電話] 010-6513-7077
[FAX] 010-6513-7079
[URL] http://www.jetro.go.jp
ビジネス特集 08年1月号一覧
情報提供:
Whenever CHINA 08年1月号
Whenever CHINA 08年1月号2008/2/25 更新











