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ビジネス特集
「有機」の潮流 〜アグリビジネスへの挑戦〜
朝日緑源の農業ビジネス展開、「農村」の目線に立った内販戦略

山東朝日緑源農業高新技術有限公司
「食の安全・安心ブランド調査2007」(日経BP社バイオセンターが実施した、食の安全・安心ブランドの評価)において「消費者が最も信頼を寄せる食ブランド総合第1位」に輝いたアサヒビール。そのビールメーカーが日本国内「最高ブランド」の栄誉に飽きたらず、中国でアグリビジネスに乗り出した。
山東省煙台市莱陽市にある朝日緑源有限公司――そこには不自由のない日本の都市生活を捨て、地元農民と共に汗を流す日本人の姿があった。

農業を通じた交流に"国境"はない。訛りのきつい土地の言葉にもひるまず、イチゴ栽培部門の責任者である兀下敏幸氏はともに作業に励む。海外青年協力隊でネパールに赴任していた経歴ももつ
"畑違い"の挑戦?
渤海湾を臨む山東半島にある煙台市。観光都市としてだけではなく、漁業生産高も高いことでも知られる。秋口以降は朝霧が容易にたちこめ、同市に向かうフライトは大幅な遅延を余儀なくされることも少なくない。
煙台市内から広々とした並木道を車で駆け抜け一時間半、アサヒビールが中国に設立した農業ベンチャー、山東朝日緑源農業高新技術有限公司(以下、「朝日緑源」と略称) の莱陽農場にたどり着く。ちなみに莱陽の正式名称は煙台市莱陽市。地級市(煙台)の下に取りこまれた市 (県級市)という位置づけだ。
もともと、中国では都市近郊の農村は都市部の後衛という立場を担っていた。莱陽市もまたその例外ではなく、地級市(煙台)への食料供給を担う重要な基地であったと見て違いない。
この農村でアサヒビールが農業経営を始めて2年。ビール会社が"畑違い"の分野になぜ進出したのか?勝算はあるのか?――さまざまな憶測や期待が入り混じった報道が日本を問わず中国でも盛んに流れたことは周知のとおりである。

いちご栽培の光景
乳業へも進出
アサヒビールの農業ビジネスへの進出のキッカケは、03年の10月に行われた前山東省書記の張高麗氏(現天津市書 記)と同社相談役の瀬戸雄三氏との会談に遡る。瀬戸氏は張氏より、ビール事業のほかに農業にも取り組んでほしいというオファーを受けたのだという。
翌年から進出候補地の調査が始まり、莱陽市に進出を決めたのが05年12月。その後、営業許可取得、農地借用を経て、06年夏には農地経営をスタートした。同年秋にはスイートコーンを収穫、現在ではプチトマト、イチゴと次々に品種を増やしている。

乳羊への取り組みも本格化
特筆すべきは今年、計650頭の乳牛をニュージーランド、オーストラリアから輸入し、乳業への進出を本格化させたことだ。すでに原乳を出荷、来年度は自主ブランドによる販売も青写真に描く。また、放牧の過程で生ずる堆肥を有機野菜の栽培肥料として還元するなど、「循環農業」は朝日緑源の経営理念の柱のひとつとして実践段階に入っている。


「朝日緑源」農場周辺の光景。長閑な光景があたり一面に広がる
深刻な「三農」問題
さて、総人口の7割を占めるといわれる中国の農村の労働力は、都市部に投入される予備軍としての役割に甘んじてきたのが実情である。今日の中国の高度経済成長において、農業は脇役に追いやられていたといっても過言ではない。
日本が農村部の過疎問題に悩むなら、中国もまた「三農問題」 (農業の低生産性、農民の低収入、農村の疲弊)を背負い込んでいる。農家・土地が個別に分散しているため、生産・販売が非効率になっているなど物流インフラの不備はもとより、肥沃度の高い土地にも関わらず、農薬・肥料の過剰使用のために土壌の質にも大きな問題があるからだという。
「しかし――」と、これにアンチテーゼを突きつけるのが朝日緑源の営業企画部長である蒲健太郎氏だ。総経理(乾裕哉氏)とともに市場戦略を担う同氏は、農業ビジネスの潜在性を次のように訴える。
「私たちは、農作物の栽培から物流・販売まで一貫したフードシステムを構築することにより中国農業改革の一助になればと取り組んでいます」 (蒲氏)

「自社ブランド」構築のためにパッケージも重視
農家からの仕掛け
「農業」を再び主役にしたビジネスモデルを構築してみようではないか――。
そんな掛け声のもとに朝日緑源に集まったのが日本人10名、中国人50名、そしてパートで参加する地域住民(平均で200名)である。
それにしてもユニークな顔ぶれである。獣医、元"上班族"、海外青年協力隊の隊員…さまざまな経歴の持ち主がさまざまな思いで中国でのアグリビジネスに取り組んでいる。
「桃太郎集団」――中国アサヒビールの清涼飲料事業と朝日緑源の営業を統括する営業本部長・井筒哲氏は朝日緑源のメンバーをこう評する。かつて同氏もまた、中国在歴10年を超える"つわもの"だ。泉のごとく湧き出るさまざまな "戦略"プランを少しだけ披露してくれた。
「たとえばイチゴのセールスについては高級ケーキのチェーン店と提携してみる。クリスマスからバレンタイン、春節と続く大きなイベントと絡ませ、贈答用ブランドとしての"朝日緑源"の知名度を高めていくのです」 (井筒氏)
付加価値の創造――他にもアイテムの性格によって、それぞれ異なる切り口で面白い展開が可能になってくるはずだ。農作物を農作物としてしか見なかった農業従事者に対して、付加価値をつくるというのはどういうことなのか、化学肥料にあまり頼らず農薬の使用を減らした農法をどのように実践に生かしていくのか、朝日緑源では粘り強く啓蒙を行って いくもようだ。すでに農場に住み込むための宿舎を建設し、2、3年以内に高度な人材育成のための研修を始める意向があるという。

上海久光に設けた「水果玉米(フルーツ・スィートコーン)」売り場
"同志"を集めて流通ネットワークを
生産量を上げ、「安定供給」という課題にどう取り組むか。ビールと同様に"鮮度"が命の野菜・果物をどのように管理するか――。
同社が単年度黒字を見込むのは 2011年、投資回収に至っては16年だ。朝日緑源のメンバーたちもまた、自らが携わる事業が、そう安々と"収穫"を享受できるものではないと認識している。
しかし、「農業事業の醍醐味、それは周囲の事業と絡めてひとつのサイクルをつくっていけること」と井筒氏が指摘するように、将来の事業拡大の可能性は大きい。「たとえば清涼飲料生産に使う茶葉の残りを肥料に利用することも可能なのではないか」 (井筒氏)
井筒氏はさらにビジョンを語り続ける。
中国で農業をしている方で、われわれ志を共にする人たちがいれば、一緒にネットワークをつくっていきたいですね。たとえば上海に品物を納めてもトラックが空のまま山東省に戻ってくるのではもったいない。青島と上海という市場に相互相乗りできるようなパートナーができれば、物流コストも半減し、無駄も排除できます」 (同)。
農村から都市へのマーケティング。朝日緑源の試みは、「温飽社会」のステージから「調和社会」へとステージを移り変えた中国の政策目標と合致し、都市と農村を対極化した存在ではなく、相互活性化を図る関係へと導いていくことだろう。
「必ず実現してみせる」――そんな強い決意が、井筒氏ほか朝日緑源のメンバーの表情にみなぎっていた。
(取材:Whenever CHINA編集部)
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2007/12/19 更新
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