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華「外」圏出身 〜中国ビジネスパーソン列伝〜
正攻法で挑戦続ける"白手起家"拠点拡大、「中小企業」の殻破る
身一つで事業を創り出した人のことを中国語で "白手起家"という。北京陸通印刷/上海陸通印刷有限公司の董事長・越智博通氏もその代表的人物だ。固定顧客ゼロからのスタート。創設段階では資金繰りにも苦労した。しかしその後は、市場拡大の追い風も受け事業は拡大、04年には上海にも法人を設立している。来年年初には天津にも駒を進める予定だ。

越智博通 氏(北京陸通印刷有限公司董事長)
「起業は簡単、経営は高難度」
北京と上海にラベル印刷工場を経営する越智博通氏の移動手段は自動車だ。ドライバーもつけず自らの運転で市内を駆け巡る。そんな仕事のスタイルを13年続けている。
もっとも、拠点間の往復ともなれば自らのハンドルに頼るわけにはいかない。とくに最近は、東奔西走の移動生活が以前よりエスカレートし始めている。08年の天津での新法人開設に向けて準備に追われているからだ。
「起業するのは簡単。経営を続けるのは高難度」と語る越智氏。さらに一言加えれば、「事業拡大も高難度」といえる。現在、社員数は北京、上海を併せて 160名。新拠点開設で人員規模はまた拡大する。組織を運営し、中小企業からの脱皮を期すには、どんな舵取りをしていくべきか―。さらなる発展を期して自身の事業経営が大きな転換期を迎えていることを越智氏は意識し始めている。

飽くなき挑戦と起業人生
話は越智氏の「駆け出し時代」に遡る。越智氏が学部新設一年目の三重大学電気工学科に入学したのは1969年のことだ。学園紛争で東京大学が入学試験を中止するなど、学生生活のスタートから波乱の中にあった。そして卒業後、「安全な株」を買うがごとく大手有名企業に就職していった同級生たちを横目に、越智氏はできるだけ小さく将来性のある就職先として中小の電子計測器のメーカーを進路先に選んでいる。
入社3年目の1975年、上海への初出張の機会が訪れた。この時の中国との縁、それはラベル印刷機製造のメーカーに転職後にも引き継がれる。中国が改革開放の軌道を着実に歩み始めた80年代半ばには北京駐在も経験した。現在の越智氏の淀みのない中国語は、当時の"実戦"で仕込まれてきたものだと想像される。
88年にサラリーマンを廃業し、日本で法人を立ち上げた越智氏。93年には念願の中国での起業に踏み切った。河北省に中古印刷機のオーバーホール、メンテ・修理を業務とする合弁会社を立ち上げたのである。しかし、これは志半ばで失敗。中古機器輸入の規制が突如厳格になったからだという。
94年、捲土重来とばかり、今度は北京で外資独資のラベル印刷工場を設立する。それが現在の北京陸通印刷である。当時の資本金の下限枠(50万ドル)の問題も提携企業(韓国資本)の支持をとりつけながらクリアし、開業認可をとりつけた(経営権は100%越智氏が掌握)。ちなみに翌年からは印刷業が再び「制限業種」として規定され、6年ほど外資による法人設立が不可能になっている。「土壇場、肝心なところで運にも恵まれた」(越智氏)。

韓国、欧米系企業の市場にも着手
これまで多くの中小企業が中国に進出、そして消え去っていった。投資ブームに浮かれ一攫千金を目指したものの、ほうほうの体で撤退していった経営者も少なくないだろう。だからこそ、固定顧客ゼロから事業を立ち上げ、さらに上海(04年)、天津(今年年末予定)と拠点増設を続ける越智氏の健闘ぶりが際立ってくる。
ラベル印刷という事業は、一枚あたりの価格でいえば元、角の下、「分」の単位にまで行き着く。まさに「薄利」を積み上げていくようなビジネスだ。当然、厳格なコスト計算、無駄を排した工場運営が求められるほか、顧客取引上、環境ISOと呼ばれる14000シリーズへの対応も必要となるなど、一見「割に合う稼業」には見えない。しかし、「粘着ラベルは製品を構成する一つの『部品』」(越智氏)という視野に立てば、消費財の増加分がまるまる潜在需要である。人口13億人の中国が有する発展空間は大きい。
「今後は日系、地場企業以外の市場にも食い込みたい」と越智氏は抱負を語る。すでに韓国人を社員に採用、韓国企業の市場開拓に先鞭をつけ始めた。「でき得れば欧米人も迎えたい」(越智氏)と欲も見せている。
印刷事業以外にもコンサル、商社などの企業も設立してきた越智氏。それぞれの機能を相互補完的に働かせながら将来の事業多角化、グループ化を見据えるという青写真も描いているはずだ。「単なる中小企業のオヤジでは終わらない」――そんな本音が聞こえてきそうだ。
越智博通 氏(おち・ひろみち)
プロフィール…北京陸通印刷有限公司/上海陸通印刷有限公司董事長・総経理。電子計測器メーカー、印刷材料・機械メーカー勤務を経て、1988年に日本で起業。その後、92年に中国へ移住、94年北京陸通印刷を設立する。04年、上海陸通印刷を設立。08年年末には天津陸通印刷の開業を予定。現在は週の前半を北京、後半を上海で過ごす。留学生向けの人材育成セミナー等に参加、講師も務めている。
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情報提供: Whenever CHINA 07年11月号
2007/11/7 更新
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