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ビジネス特集
「労働契約法」徹底攻略 〜リスク回避策を探る〜
労働契約法の新たな視点 M&A・企業再編への影響
労働契約法制定を契機に、外資系企業は雇用・労務の実務見直しを迫られている。未だ注目されないM&A・企業再編に関するポイントを取上げる。
実務対応の四つの視点
労働契約法(以下、新法)については数多くのポイントが指摘されているが、実際の対応については幾つかの視点から分類できる。
まず、新法施行日の2008年1月1日までに、労働契約や就業規則の内容を新法に合致したものに改める必要がある(契約・規則文書の整備)。
次に、就業規則の制定、労働協約の締結や解雇手続など、労働組合の関与が必要とされている各種手続については、法定の手続に漏れのないよう手順を確立し書面化する必要があり、そのためのマニュアルが必要となる(対労組の手続の整備)。
次に、無固定期限 (期間の定めのない)労働契約の締結、研修後の離職制限期間の約定、競業避止義務などは、多くの企業にとって新たな労務管理システム作りが必要となる(労務管理システムの整備)。
競業避止義務を例に取ると、経済補償金のコストを考慮すれば、対象者をある程度選別して競業避止契約を締結する必要がある。また、雇用後の昇進や配置転換を契機として営業秘密に関与するようになった場合、新たに競業避止契約を締結する必要が生じる。その対応にはきめの細かい労務管理システムが必要となろう。
さらに、派遣労働に関しては新法を契機として大幅な実務の変化がありうるため、派遣労働に依存している会社は今後の実務動向に注意する必要がある(実務動向のフォロー)。
リストラに対する厳格な規制
M&A (企業の合併・買収)や企業再編に伴い、労働コストの削減や経営の効率化を目的としてリストラが行われることが多い。ところが、新法四一条はリストラに対する厳格な規制を置いている。人数が20人以上、または全従業員の10%以上の労働者を解雇できるのは、[1]破産法に基づく再建、[2]生産・経営上の重大な困難の発生、[3]企業に生産品の変更、重大な技術革新または経営方式の調整があり、労働契約の変更後もなおリストラの必要がある場合、[4]その他、労働契約締結時の客観的経済状況に重大な変化が生じ、労働契約が履行できなくなった場合に限定され、専ら会社の経営が危機にある場合にリストラが行えることになる。
しかも、リストラ対象の選定に際し、[1] 長期労働契約の労働者、[2]無固定期限労働契約の労働者、[3]家庭内に他の働き手がおらず、被扶養者がいる者は、優先的に残さなければならず、業務上の能力のみで対象者を決定できない。新法では無固定期限労働契約を締結すべき範囲が大幅に拡大されているため、[2]の対象者は増加していくと予想される。
なお、リストラの際の手続として、30日前までに労働組合または全従業員に事情を説明し、意見聴取後に、労働行政部門にリストラ案を事前届出する必要があるため、労働組合が強く反対した場合はリストラ遂行に支障が生じるおそれもある。
M&A後の就業規則変更が困難に !?
このように、法の厳しい制限により経営上必要なリストラの実行が困難となる可能性がある。実務的には、少人数のリストラに止めて上述の規定の適用対象外とすることや (ただ新法では通常の解雇の要件も限定され、さらに解雇手続への労働組合の関与が強化されたことに要注意)、早期退職の奨励制度 (退職金の上積み支給など)を設けて自発的な退職を促すことが考えられる。
また新法では、労働契約の終了や解除の際の経済補償金の支払対象が拡大され、賃金や残業代の未払いに対する増額支払のペナルティがあること等から、賃金コストの全般的な上昇が予想されるが、これは企業買収の際にもコストアップ要因となりうる。
さらに、買収後に対象会社の就業規則を変更しようとする際には、従業員代表大会または従業員全体で討議し、変更案を労働組合または従業員代表との協議を経て確定する必要がある。また、労働組合や従業員は、不適切な就業規則を使用者と協議して改正する権利があるとされている。そのため、M&Aや企業再編の際に予定していた就業規則の変更が事後的に行えなくなる可能性がある。
今後、この分野に関する実務の動向に注意を払う必要があろう。
野村高志(のむら たかし)
フレッシュフィールズ ブルックハウス デリンガー法律事務所(上海オフィス) 弁護士
プロフィール…1964年神戸市生まれ。早稲田大学法学部卒業。2001年より中国法務を手掛け、 05年から上海オフィスに勤務、日系企業向けの法務サービスに従事。ジェトロ上海IPGメンバー。
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情報提供: Whenever CHINA 07年9月号
2007/09/17 更新
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