ビジネス特集
労働契約法のリスク分析と今後の対応策を解説
労働契約法によって労務管理に変化が生じる点に絞って条文を解説。その上でリスク分析と今後の対応策について論じる。
[1] 契約締結しなければ二倍の賃金
第八二条 雇用単位は、労働者使用の日から1ヵ月を超え1年未満に労働者と書面による労働契約を締結しない場合には、労働者に毎月2倍の賃金を支払わなければならない。
【解説】
条文のとおり、雇用者が労働者を雇い始めた日から1月以内に労働契約を締結しない場合には、罰則として毎月2倍の賃金を支払わされることになった。
さらに、1年以上経過しても締結しない場合には、日本の終身雇用制に近い無固定期間労働契約を締結しているものとみなされる。(新法第一四条)
【リスク&対応策】
進出日系企業の中で従業員と労働契約を締結しないケースはほとんどないと思われ、対策に苦慮するというケースはまずないだろう。しかし、一部の中小企業で末端の営業人員やアシスタントとの労働契約を怠っているのを見かけることがある。これにより、社会保険の納付を免れてきた企業もあるだろう。 但し、「2倍の賃金」という労働者側に極めて有利な罰則が明文化されたことにより、今後は労働者に後から労働行政部門に密告され、2倍の賃金という高いツケを払わされることになるかもしれないのでこれまで以上に注意したい。
[2] 試用期間ルールの明確化
第二一条 試用期間において、労働者に第三九条並びに第四〇条第(1)号及び第(2)号所定の事由がある場合を除き、雇用単位は、労働契約を解除してはならない。雇用単位は、試用期間に労働契約を解除する場合には、労働者に理由を説明しなければならない。
【解説】
試用期間に関する特筆事項は、なんと言っても労働者の解除用件が厳格化し、労働者にその理由を説明しなければならなくなった点だろう。
これ以外には、期間設定の基準が左表のように詳細に規定されたことや、試用期間は労働契約の期間に含まれ、賃金は労働契約で約定する賃金の80%を下回ってはいけない等の基準も設定された。(新法第一九、二〇条)
【リスク&対応策】
労働者から「納得のいく説明を受けていない」と当局に持ち込まれないように、或いは持ち込まれても会社が敗訴しないよう、労働者採用時の採用条件の明確化や評価システムを整備する必要がある。
抜本的対策としては、従業員採用時の試験・面接を一層、厳格にする必要もある。「良くなければ試用期間で切ればよい」から「採用した以上は徹底して育て上げる」という、日本的な考え方に今こそ転換すべきなのかもしれない。
第八二条 雇用単位は、労働者使用の日から1ヵ月を超え1年未満に労働者と書面による労働契約を締結しない場合には、労働者に毎月2倍の賃金を支払わなければならない。
【解説】
条文のとおり、雇用者が労働者を雇い始めた日から1月以内に労働契約を締結しない場合には、罰則として毎月2倍の賃金を支払わされることになった。
さらに、1年以上経過しても締結しない場合には、日本の終身雇用制に近い無固定期間労働契約を締結しているものとみなされる。(新法第一四条)
【リスク&対応策】
進出日系企業の中で従業員と労働契約を締結しないケースはほとんどないと思われ、対策に苦慮するというケースはまずないだろう。しかし、一部の中小企業で末端の営業人員やアシスタントとの労働契約を怠っているのを見かけることがある。これにより、社会保険の納付を免れてきた企業もあるだろう。 但し、「2倍の賃金」という労働者側に極めて有利な罰則が明文化されたことにより、今後は労働者に後から労働行政部門に密告され、2倍の賃金という高いツケを払わされることになるかもしれないのでこれまで以上に注意したい。
[2] 試用期間ルールの明確化
第二一条 試用期間において、労働者に第三九条並びに第四〇条第(1)号及び第(2)号所定の事由がある場合を除き、雇用単位は、労働契約を解除してはならない。雇用単位は、試用期間に労働契約を解除する場合には、労働者に理由を説明しなければならない。
【解説】
試用期間に関する特筆事項は、なんと言っても労働者の解除用件が厳格化し、労働者にその理由を説明しなければならなくなった点だろう。
これ以外には、期間設定の基準が左表のように詳細に規定されたことや、試用期間は労働契約の期間に含まれ、賃金は労働契約で約定する賃金の80%を下回ってはいけない等の基準も設定された。(新法第一九、二〇条)
【リスク&対応策】
労働者から「納得のいく説明を受けていない」と当局に持ち込まれないように、或いは持ち込まれても会社が敗訴しないよう、労働者採用時の採用条件の明確化や評価システムを整備する必要がある。
抜本的対策としては、従業員採用時の試験・面接を一層、厳格にする必要もある。「良くなければ試用期間で切ればよい」から「採用した以上は徹底して育て上げる」という、日本的な考え方に今こそ転換すべきなのかもしれない。

[3] 経済補償金の負担増
第四六条 次に掲げる事由の一がある場合には、雇用単位は、労働者に経済補償を支払わなければならない。
(5) 雇用単位が労働契約に約定する条件を維持し、又は引き上げて労働契約を更新し、労働者が更新に同意しない状況を除き、第四四条第(1)号の規定により固定期間労働契約を終了するとき。
【解説】
経済補償金とは労働者の勤務年数に応じて支払われるもので、従来能力的に業務に耐えない等の理由により労働契約を途中で解除する場合に支払いが義務付けられていた。しかし新法施行以降は、労働契約期間の満了で労働者を雇い止めする場合にも、経済補償金の支払いが義務付けられることに。(新法第四六条(5))
支払い金額の算定は、勤務年数満1年ごとに1月分の賃金。6カ月以上1年未満は1年、6カ月未満は半月分として計算する。従業員の賃金が当地の前年度の従業員月平均賃金の3倍を超える場合には3倍を上限とし、最高で12年(=12 カ月分)を超えないとする基準もあり。 (新法第四七条)
【リスク&対応策】
これまでは経済補償金の支払い回避のため、契約期間満了で雇用関係を終了させる、雇い止めが従業員の実質的解雇策として活用されてきたが、08年1月1 日以降はこの日から起算する勤務年数分の経済補償金を雇い止めの際にも支払わなければならない。(新法第九七条)これは企業の責務であり、来年以降は新たな労務管理費用として計上するしかない。
但し、上述のように「当地の前年度の従業員月平均賃金の3倍」を上限とするという制限も加えられている。3倍を超える部分の支払いまで求める一般従業員が出てきた場合には、第四七条の規定に依り従業員を説得しよう。
[4] 就業規則の「民主化」義務
第四条第二項 雇用単位は、労働報酬、業務時間、休息休暇、労働安全衛生、保険福利、従業員の養成・訓練、労働規律及び労働ノルマ管理等の労働者の密接な利益に直接にかかわる規則制度又は重大事項を制定し、変更し、又は決定するときは、従業員代表大会又は従業員全体の討論を経て、方案及び意見を提出し、労働組合又は従業員代表と平等に協議してこれを確定しなければならない。
【解説】
就業規則の制定自体は労働法でも義務付けられていたが、新法第四条では労働者への公示・告知も義務付けられた。公示・告知を怠ると、就業規則に照らし罰則を加えようとしても、就業規則の効力が認められないことになる。また就業規則の制定、修正の際、従業員代表又は従業員全体との討論を経て方案を提出し、労働組合又は従業員代表と平等に協議し確定しなければならないと規定された。
民主的な手続きを経て制定され、労働者に適切に公示されている就業規則でないと効力を認めないとするこれまでの司法解釈が、新法により明確化された。
【リスク&対応策】
会社の規則制度の制定にこれまで以上の民主化が求められる。極端に言えば、就業規則違反として従業員を解雇しようとした際、就業規則の制定・修正過程に従業員が適切に関与していないとして当該従業員が就業規則の無効を訴え、仲裁委員会や人民法院で会社側の判断は不当である、と見なされる可能性も出てくる。
しっかりと働く従業員には手厚い庇護を与える一方、会社の風紀を乱すような従業員には厳罰を与えることができるよう、就業規則を含めた規則制度の制定・修正の民主化手続きは整えておきたい。
第四六条 次に掲げる事由の一がある場合には、雇用単位は、労働者に経済補償を支払わなければならない。
(5) 雇用単位が労働契約に約定する条件を維持し、又は引き上げて労働契約を更新し、労働者が更新に同意しない状況を除き、第四四条第(1)号の規定により固定期間労働契約を終了するとき。
【解説】
経済補償金とは労働者の勤務年数に応じて支払われるもので、従来能力的に業務に耐えない等の理由により労働契約を途中で解除する場合に支払いが義務付けられていた。しかし新法施行以降は、労働契約期間の満了で労働者を雇い止めする場合にも、経済補償金の支払いが義務付けられることに。(新法第四六条(5))
支払い金額の算定は、勤務年数満1年ごとに1月分の賃金。6カ月以上1年未満は1年、6カ月未満は半月分として計算する。従業員の賃金が当地の前年度の従業員月平均賃金の3倍を超える場合には3倍を上限とし、最高で12年(=12 カ月分)を超えないとする基準もあり。 (新法第四七条)
【リスク&対応策】
これまでは経済補償金の支払い回避のため、契約期間満了で雇用関係を終了させる、雇い止めが従業員の実質的解雇策として活用されてきたが、08年1月1 日以降はこの日から起算する勤務年数分の経済補償金を雇い止めの際にも支払わなければならない。(新法第九七条)これは企業の責務であり、来年以降は新たな労務管理費用として計上するしかない。
但し、上述のように「当地の前年度の従業員月平均賃金の3倍」を上限とするという制限も加えられている。3倍を超える部分の支払いまで求める一般従業員が出てきた場合には、第四七条の規定に依り従業員を説得しよう。
[4] 就業規則の「民主化」義務
第四条第二項 雇用単位は、労働報酬、業務時間、休息休暇、労働安全衛生、保険福利、従業員の養成・訓練、労働規律及び労働ノルマ管理等の労働者の密接な利益に直接にかかわる規則制度又は重大事項を制定し、変更し、又は決定するときは、従業員代表大会又は従業員全体の討論を経て、方案及び意見を提出し、労働組合又は従業員代表と平等に協議してこれを確定しなければならない。
【解説】
就業規則の制定自体は労働法でも義務付けられていたが、新法第四条では労働者への公示・告知も義務付けられた。公示・告知を怠ると、就業規則に照らし罰則を加えようとしても、就業規則の効力が認められないことになる。また就業規則の制定、修正の際、従業員代表又は従業員全体との討論を経て方案を提出し、労働組合又は従業員代表と平等に協議し確定しなければならないと規定された。
民主的な手続きを経て制定され、労働者に適切に公示されている就業規則でないと効力を認めないとするこれまでの司法解釈が、新法により明確化された。
【リスク&対応策】
会社の規則制度の制定にこれまで以上の民主化が求められる。極端に言えば、就業規則違反として従業員を解雇しようとした際、就業規則の制定・修正過程に従業員が適切に関与していないとして当該従業員が就業規則の無効を訴え、仲裁委員会や人民法院で会社側の判断は不当である、と見なされる可能性も出てくる。
しっかりと働く従業員には手厚い庇護を与える一方、会社の風紀を乱すような従業員には厳罰を与えることができるよう、就業規則を含めた規則制度の制定・修正の民主化手続きは整えておきたい。

雇い止めは可能か?
[5] 無固定期間労働契約の条件追加
第一四条 「無固定期間労働契約」とは、雇用単位と労働者とが終了の時の確定がない旨を約定する労働契約をいう。
雇用単位と労働者とは、協議により合意したときは、無固定期間労働契約を締結することができる。次に掲げる事由の一があり、労働者が労働契約の更新若しくは締結を提起し、又はこれに同意する場合には、労働者が固定期間労働契約の締結を提起する場合を除き、無固定期間労働契約を締結しなければならない。
(1) 労働者が当該雇用単位において勤続 10年以上であるとき。
(3) 2回の固定期間労働契約を連続して締結し、かつ、労働者に第三九条並びに第四〇条第(1)号及び第(2)号所定の事由のない場合において、労働契約を更新するとき。
【解説】
無固定期間労働契約を締結しなければならない条件が追加された。これまでは、 (1)の用件だけであったが、今後は(3) の要件を満たした場合も無固定期間労働契約を締結しなければならなくなる。
法令を素直に読むと、3回目の契約更新時に会社側はなお労働者を雇い止めにすることもできると解釈できそうだが、中国ですでに発行されている労働契約書の解説書の中には、3回目の契約更新時には無固定期間労働契約を締結しなければならない、と説明しているものもあるため、今後の法律の運用が注目される。
【リスク&対応策】
無固定期間労働契約の回避のためにまず考えられるのは、契約期間の短期化、契約回数の最小化だ。3回目に必ず無固定期間労働契約の締結が義務付けられた場合、労働契約は1回しか締結しないという企業も出てくることになるだろう。
無固定リスク回避のためにFESCO などの派遣会社を利用する手段も考えられるが、この問題に対する派遣会社の態度がいまだ定まっておらず、彼らの今後の出方をさらに見極める必要がある。
一方、無固定リスクを逆手に、日本型の雇用システムを前提とした人事労務制度の設計を検討する会社もある。このような立場に立てば、日本型の労務管理ノウハウが有効に活用できるかもしれない。
第一四条 「無固定期間労働契約」とは、雇用単位と労働者とが終了の時の確定がない旨を約定する労働契約をいう。
雇用単位と労働者とは、協議により合意したときは、無固定期間労働契約を締結することができる。次に掲げる事由の一があり、労働者が労働契約の更新若しくは締結を提起し、又はこれに同意する場合には、労働者が固定期間労働契約の締結を提起する場合を除き、無固定期間労働契約を締結しなければならない。
(1) 労働者が当該雇用単位において勤続 10年以上であるとき。
(3) 2回の固定期間労働契約を連続して締結し、かつ、労働者に第三九条並びに第四〇条第(1)号及び第(2)号所定の事由のない場合において、労働契約を更新するとき。
【解説】
無固定期間労働契約を締結しなければならない条件が追加された。これまでは、 (1)の用件だけであったが、今後は(3) の要件を満たした場合も無固定期間労働契約を締結しなければならなくなる。
法令を素直に読むと、3回目の契約更新時に会社側はなお労働者を雇い止めにすることもできると解釈できそうだが、中国ですでに発行されている労働契約書の解説書の中には、3回目の契約更新時には無固定期間労働契約を締結しなければならない、と説明しているものもあるため、今後の法律の運用が注目される。
【リスク&対応策】
無固定期間労働契約の回避のためにまず考えられるのは、契約期間の短期化、契約回数の最小化だ。3回目に必ず無固定期間労働契約の締結が義務付けられた場合、労働契約は1回しか締結しないという企業も出てくることになるだろう。
無固定リスク回避のためにFESCO などの派遣会社を利用する手段も考えられるが、この問題に対する派遣会社の態度がいまだ定まっておらず、彼らの今後の出方をさらに見極める必要がある。
一方、無固定リスクを逆手に、日本型の雇用システムを前提とした人事労務制度の設計を検討する会社もある。このような立場に立てば、日本型の労務管理ノウハウが有効に活用できるかもしれない。
馬場久佳(ばば ひさよし)キャストコンサルティング(上海)有限公司 コンサルタント
1974 年栃木県生まれ。東北大学、東京大学大学院で中国文学を学ぶ。大手新聞社での記者職勤務を経て、2006年キャストコンサルティング(上海)有限公司入社。
ビジネス特集 07年9月号一覧
情報提供:
Whenever CHINA 07年9月号
Whenever CHINA 07年9月号2007/09/17 更新










