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フィールドワークとしての中国不動産市場 第17回:浦東(陸家嘴エリア)への期待
今年8月28日、上海の陸家嘴エリアに、森ビルが開発した「上海環球金融中心(SWFC)」が正式に公開された(敷地面積3万平方メートル、延床面積38万1600平方メートル(うち、オフィスは22万6900平方メートル)、高さ474メートル、オフィス・ホテル・商業店舗を中心とする複合施設)。90年代に開発がはじまったが、計画が頓挫していた時期もあり、竣工までにかれこれ10年以上の月日を要したプロジェクトである。公開時点で、アンテナなどをのぞくと、完成建築物の高さで世界一となった。世界中から注目を集め、記者会見は、国内外のマスコミや関係者で大盛況だった模様だ。

今後SWFCには、日系企業では、みずほコーポレート銀行、大塚商会、三井物産、住友商事、欧米企業ではドイツのコメルツ銀行、フランスのBNPパリバ、その他韓国の韓国産業銀行、中国の国泰基金などが入居する予定となっている(三井住友銀行は6月に入居済み)。正式に公開された時点での稼働率は45%だったが、上海で一般的なグレードAオフィス1本分をまるまる埋めるような規模である。今後1年で90%にまで稼働率を上げるのが目標だそうだ。

上海のオフィス市場にとって、今年はひとつのメルクマールになるだろう。これには、SWFCの竣工のほか、陸家嘴エリアのグレードAオフィスの新規供給がピークに達するとの意味がある。私が実際に見て回った感触では、SWFCのほか、中融大厦(Jasper Tower)の8万平方メートル、未来資産大厦(Mirae Asset Tower)の5万2000平方メートル、高宝金融大厦(Global Finance Tower)の7万5000平方メートル、渣打銀行大厦(Standard Charterd Tower)の3万6000平方メートル、上海銀行大厦(Bank of Shanghai Tower、自己使用以外)などが主な新規供給であろう。各種不動産関連のレポートによって、陸家嘴エリアにおけるグレードAオフィスの新規供給量の数字は異なるが、70万平方メートル程度と見てよいだろう。過去数年間、陸家嘴エリアでは、新規供給がまとまって出てきたことは希で、1年に1本か2本程度の供給がぽつぽつと見られた程度だった。SWFCによる新規供給は確かに大きく、数字上、大幅に引き上げることになるがその他のオフィスの存在も忘れてはならない。

これまで、供給が比較的限られていたことから、陸家嘴エリアでは、上海に進出する外資企業や大規模なオフィススペースが必要な企業などからの需要が強い状況が続いてきた。これが、今年の新規供給により、需給バランスが逆転し、陸家嘴エリア全体の稼働率と賃料に対して大きな影響を与えるのではないかという見方が根強いのも事実である。数字の大きさだけでもこの考えはある程度当てはまるが、この見方を増幅させたのは昨年半ば以降に表面化してきたサブプライムローン問題や世界的な景気減速である。実際に、国内外の企業で、陸家嘴エリアへのオフィス移転や進出を見合わせ、現存の契約を更新するケースが見られる。また、一部のオフィスは賃料の値下げを検討している。新規供給予定のオフィスにとっては、サブプライムローン問題は想定外の影響だったのかもしれない。今後、SWFC以外での競争がはじまる可能性がじゅうぶんにあるだろう。

SWFC「以外」と書いた理由は、SWFCは上海初(中国初といっても過言ではない)の「国際級」グレードAオフィスであり、現在、競合が見あたらないからである。ようやく「国際級」のオフィスがやってきた、という感がある。賃料は中国大陸で最高水準であるのは間違いないが(3ドル/平方メートル/日)、香港や東京、シンガポールの水準に達しているわけではない。国際的な金融機関や弁護士事務所、会計士事務所などにとっては、まだ割安感がもてる水準である。足下では、サブプライムローン問題の影響より、SWFCおよび上海の経済的発展への期待感のほうが強いのではなかろうか。今後、稼働率の動向と入居テナントは注目に値するだろう。すなわち、現在の稼働率45%がどのような軌跡をたどって目標の90%に達するか、どのような企業がナンバーワンのステータスを求めてくるのか楽しみである。
SWFCは、これまでにない市場をつくりだした。これが陸家嘴エリアの発展第二ステージのはじまりとするならば、次は、香港の新鴻基地産が開発を進めている「上海国金中心(Shanghai IFC)」に注目すべきだろう。香港のInternational Finance Centreを彷彿させる開発が上海でもおこなわれているわけである。延床面積40万平方メートル、そのうちオフィス21万平方メートル、商業店舗が10万平方メートル、ホテルが9万平方メートル、竣工は09年から10年の予定となっている(筆者が見たところ、建設は順調に進んでいる模様)。すでに、HSBCが自社用にオフィススペースを購入し、ビル命名権も取得している。ホテルはリッツカールトンおよびW-Hotelが入る予定となっている。オフィスはSWFCに匹敵するグレードになると予測されるほか、SWFC以上の規模の商業店舗スペースが供給され、隣に位置する正大広場を越える陸家嘴エリアのショッピングエリアとなるのは間違いないだろう。
 そして、SWFCの隣に開発が予定されている「上海中心(Shanghai Center)」が第二ステージを締めくくることになる。延床面積50万平方メートル以上、高さ632メートルという企画で、SWFCや台北の「台北101」(508メートル)を遙かにしのぐ規模である。2013年から14年の竣工が予定されている。

上海市政府は、陸家嘴エリアを一大金融センターにする計画を実施しており、上海中心が竣工するころには上海は大きく変貌していることだろう。まだまだ発展途中の陸家嘴エリア、今後も目が離せない。
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情報提供: Stasia Capital Holding Limited
2008/11/26 更新
筆者:安田明宏氏
Stasia Capital調査部主任研究員
プロフィール…名古屋大学大学院文学研究科博士課程単位取得満期退学。インドネシア・スラバヤ国立大学大学院国家教育研究科博士課程留学。専攻は文化人類学。


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