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フィールドワークとしての中国不動産市場 第14回:政策的ジレンマの中における中国不動産投資(4)
政策的ジレンマの中での中国不動産投資
金融引き締め政策下では不動産価格の調整が長期化するとの見方が強く、早急に売却しなければならないという気持ちが高まってきているのは事実だろう。すでに述べたとおり、デベロッパーの資金繰り問題に対する懸念が強くなってきている。資金回収を急ぐため、販売価格を下げる可能性が高くなり、不動産価格の下落につながる見方が強くなってきている。不動産価格の下落は、銀行からの融資がさらに引き締められることにつながりかねない。

インフレ懸念が台頭し、景気を下支えする重要な要素にまで成長した消費にも影響が出はじめている。株式や不動産などの資産が目減りするとの警戒感も強くなり、景気全体の先行き不透明感が市場を覆いはじめている。

デベロッパーの資金繰りの問題だけではない。株式市場の低迷が、本格的に不動産市場の低迷につながる可能性も否定できなくなってきた。2007年前半に見られた株式市場と不動産市場の間に生じた環流現象は、すっかり息を潜めている。これまで、あまりにもキャピタルゲインを狙う投資が横行し、インカムゲインから見た投資利回りが下落する傾向も認められる。中国国内のデベロッパーや機関投資家にとっては、厳しい状況が続くのは避けられない情勢である。

懸念材料が先行する中国不動産市場において、今後、外資はどのような動きをみせるのだろうか。
先に、最近発表された外資による不動産投資に関する政策を確認しておきたい。商務部は、「商务部关于做好外资投资房地产业备案工作的通知(商資函[2008]23号)」(「外資投資不動産企業の登記業務の強化に関する通知」)を発表した。昨年5月から不動産にかかる外商投資企業(WFOE)の登記が地方政府から中央政府に移ったが、今回の政策を受けて、今年7月1日から再び地方政府での登記に戻った。

この政策の発表前は、WFOE設立の時間が短縮されるとの期待が広がったほか、外資誘致に積極的な地方都市における外資による不動産投資が加速するといった意見が相次いだ。しかし、正式発表後の内容を見ると、中央政府は、地方政府による登記状況を無作為にチェックし、違反に対しては、厳しく対処する旨が記載されていることから、必ずしも外資による不動産投資を促進するものではないとの意見も少なくはない。実際、昨年5月からはじまった中央政府での登記作業は、当局の作業負担になっていたようで、今回の政策は、単純に、作業負担の軽減が主な目的であると考えられる。

地方政府にWFOEの登記作業が移管され、今後は、中央政府がどのようにしてこの作業を監視するのか、注目が集まっている。中央政府は、今年7月14日から関連部局と共同で外貨収入を取り締まる新システムを導入することを発表し、ホットマネーの流入に対して、中央政府が本格的に監視を強化する動きがはじまった。今回の政策の背景には、外貨流入の実態を把握できれば、登記作業は地方に任せても問題がないとの判断があったのかもしれない。

今回の政策転換により、これまでWFOEの設立問題で中国不動産投資をあきらめていた外資にとっては活路が見いだせた形となった。少なくとも、設立における時間的な問題は大きく改善される可能性が高い。しかし、外資による不動産投資に対する規制緩和という意味合いは薄い点には注意が必要である。06年7月に発表された外資規制による、WFOE設立を前提とした中国不動産投資というストラクチャーは崩れていない。設立にあたっての登記が地方政府に移管されただけであり、引き続き新規参入プレイヤーにとっては、敷居の高い状況が続くものと予測される。

大きな政策転換は見られないことから、今後の外資の動きとしてまず考えられるのは、資金繰りに窮するデベロッパーに対する資金の提供だろう。銀行から融資を受けられない、株式市場での資金調達も困難、となると、中国国内のデベロッパーは、外資からの資金調達に活路を見いださざるを得ない状況となる。外資にとっては、一等地での開発・投資チャンスが巡ってくる可能性があるほか、長期的戦略を練る機関投資家にとっては、中国国内デベロッパーとのコネクションを強化する機会と捉えることができるだろう。

次に、上記で述べたように、外資による保有不動産の売却が続く可能性が十分にある。すでに長期間にわたり保有しつづけた不動産に関しては、利益確定の動きも広がっている。2007年前半に急激に価格上昇を経験した機関投資家にとっては、現在の不透明感は利益確定を促す一要因となりうる。外資が保有する高級物件は、やはり外資が購入するという流れもできており、「不動産価格の上昇」と「人民元の切り上げ」期待を抱く外資の機関投資家にとっては、まだまだ魅力的な投資対象に映る。また、大都市中心部における高級物件の開発案件が激減している現状があり、希少性という側面からも外資が狙うにふさわしい環境を提供しているといわれている。金融引き締め政策は、外資の機関投資家にとっては必ずしも悪い投資環境を提供しているとは限らない。中国国内の不動産価格が下落するなら、次の買い時を探るいい機会となる。資金繰りの問題からくる資金提供と継続的な投資熱が、今後の外資による不動産投資のトレンドとなるだろう。

最近、金融引き締め政策に逆行する動きも見られはじめた。一部の都市では、銀行に対して、デベロッパーへの融資を拡大するように地方当局から通達が出たといわれている。デベロッパーの大量倒産が経済へ大きなインパクトを与えるとの懸念が広がったためと見られている。現在の金融引き締め政策への批判も出はじめており、金融緩和策への模索もはじまっているようだ。ただし、インフレ懸念が台頭する中、金融緩和策へ転換するのは容易ではないだろう。

中央政府の政策的ジレンマは、株式市場や不動産市場の調整を生み出す。一方、このジレンマに支えられて、外資の機関投資家は中国不動産市場に目を光らせるジレンマを中央政府は受ける。今後、どのように中央政府が経済政策の舵をとるのか、注目が集まっている
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フィールドワークとしての中国不動産市場 第13回:政策的ジレンマの中における中国不動産投資(3)
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フィールドワークとしての中国不動産市場 第1回:統計嫌いの不動産市場調査
情報提供: Stasia Capital Holding Limited
2008/08/22 更新
筆者:安田明宏氏
Stasia Capital調査部主任研究員
プロフィール…名古屋大学大学院文学研究科博士課程単位取得満期退学。インドネシア・スラバヤ国立大学大学院国家教育研究科博士課程留学。専攻は文化人類学。


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