中国業界人記事
外資も物件売却に方向転換、一方で投資熱は続く
国内のデベロッパーが資金繰りに窮する状況が続く中、米国サブプライムローン問題や原油高、食料価格の急増などの影響から世界的な景気後退が避けられないとの懸念が強くなってきている。諸問題の長期化傾向が見えつつある現在、保有資産の売却をはじめる外国の機関投資家が出てきている。ここで、最近の外資による上海での売買事例を確認してみたい。
(表)外資による売買事例
(Stasia Capital調査部作成)
(表)外資による売買事例
| 取引時期 | プロジェクト名 | 用途 | 売主(国/地域) | 買主(国/地域) | 総額 | 取引面積 | 備考 |
| 2007年7月 | 高騰大厦 | オフィス | ゴールドマンサックス(アメリカ) | SEB(ドイツ)、パシフィックスター(シンガポール) | 約1億5,200万米ドル | 41,661平方メートル | |
| 2007年8月 | 中区広場 | オフィス | 上海華天房地産発展有限公司(中国) | トレジャリーグループ(アイルランド) | 約1億4,773万米ドル | 46,824平方メートル | |
| 2007年8月 | 虹橋上海城一期・三期 | 商業、オフィス | 上海華天房地産発展有限公司(中国) | トレジャリーグループ(アイルランド) | 約4億2,000万元 | ||
| 2007年9月 | 翠湖天地御苑 | 住宅 | 瑞安集団(香港) | グローヴナー(イギリス) | 約7,842万米ドル | 8,920平方メートル | |
| 2007年9月 | 上海環球金融中心 | 商業、オフィス | 森ビル(日本) | モルガンスタンレー(アメリカ) | 約4億2,000万元 | - | 環球金融中心の株式10%を取得 |
| 2007年11月 | 永新広場 | オフィス | シティグループ(アメリカ) | キャピタルストラテジック(香港) | 約1億500万米ドル | 29,027平方メートル | 株式譲渡 |
| 2008年1月 | 華山夏都 | 住宅 | モルガンスタンレー(アメリカ) | グローヴナー(イギリス) | 約12億元 | 29,280平方メートル | |
| 2008年2月 | 済南路8号 | 住宅 | 三林グループ(インドネシア) | カーライルグループ(アメリカ) | 約19億9,000万元 | 39,814平方メートル | |
| 2008年2月 | 翠湖天地御苑18号 | 住宅 | ゲートウェイキャピタル(香港) | 韓国未来資産投資会社(韓国) | 約9億6,300万元 | 15,787平方メートル | |
| 2008年5月 | 世紀商貿広場 | オフィス | ハチソン・ハーバー・リング(香港) | アジアパシフィックランド(アメリカ) | 約44.億3,800元 | 98,000平方メートル | 株式譲渡 |
事例を見ると、ゴールドマンサックス、モルガンスタンレー、シティグループといったメジャープレイヤーらが保有物件を放出している一方、香港デベロッパーが外国の機関投資家に売却を進める動きも認められる。
昨年中ごろまでの外資による不動産投資といえば、強力な人民元切り上げと不動産価格の上昇期待を背景に展開されていた。とくに、06年7月の外資規制(いわゆる「171号文件」)以前は、オフショアに設立した特別目的会社(SPC)から直接不動産を保有できたことから、外資による中国不動産投資がホットマネー流入の槍玉にあげられたことは周知のとおりである。
昨年半ば以降、すなわち、サブプライムローン問題が顕在化した以降は、世界的な景気先行き不安とインフレ懸念が台頭し、損失穴埋めのために売却を検討する機関投資家の動きが活発化した。また、すでに述べたとおり、香港でも資金調達が困難になってきており、一部の香港デベロッパーが利益を確定した保有不動産を売り出しはじめた。
しかし、売却のみが市場における趨勢になっているというわけではない。問題を抱えた機関投資家が売却する不動産を購入しようと考える機関投資家が必ず存在する。外資は、概してグレードの高い物件をポートフォリオに組み込む傾向が強く、昨年半ば以降の売買においても、外資同士の売買が目立つ。最近の売却傾向は、機関投資家やデベロッパーが、「市況により影響を受けた自身の問題」に端を発しているものである。
世界経済の減退懸念と中国国内での金融引き締め政策の状況下、中国不動産市場への積極展開を考える外資の機関投資家の見方は、実は以前とほとんどかわっていない。圧倒的な需要を背景とする中国不動産価格の長期的上昇と人民元の切り上げ期待は、そう簡単に崩れるものではない。とくに、人民元の切り上げに期待を寄せない機関投資家はいないだろう。
現在、人民元の切り上げは中央政府の厳しい監視下に置かれている。小幅な調整を続ける一方、金利の引き上げなどでインフレを吸収しようとしている。外資の機関投資家の間では、金融引き締め政策はそろそろ限界に達しつつあるとの見方が強くなってきている。現在、外貨が溜まり込むとマネーサプライが増え続ける構造となっている。いずれ、人民元の切り上げ幅を拡大して、マネーサプライを減らす政策を打たざるをえない状況がやってくるだろうと見越しているのである。中央政府の政策的ジレンマの構造は、簡単には崩れないとの見方が強いのである。
市況の変化で売却を進めざるをえない機関投資家やデベロッパーがいることは、「不動産価格の上昇」と「人民元の切り上げ」期待を抱く外資の機関投資家にとってチャンスと映る。たとえば、今年5月に売却されたグレードAオフィスの「世紀商貿広場」は、4万5千元/平米で取引された。周辺の価格相場が5万元/平米以上といわれており、相場より安く購入できる可能性を示唆した取引事例として注目された。
現在のところ、昨年半ば以前の状況とは違う形で、売却と購入における思惑が一致している場合が多いように感じられる。とくに、06年7月以前に海外SPCが購入した不動産に関しては、株式をつうじて物件売買が可能であることから人気が集まっている。
今後、この動向がどのように変化するかは、今後の中央政府の経済政策が大きなキーポイントとなるだろう。
昨年中ごろまでの外資による不動産投資といえば、強力な人民元切り上げと不動産価格の上昇期待を背景に展開されていた。とくに、06年7月の外資規制(いわゆる「171号文件」)以前は、オフショアに設立した特別目的会社(SPC)から直接不動産を保有できたことから、外資による中国不動産投資がホットマネー流入の槍玉にあげられたことは周知のとおりである。
昨年半ば以降、すなわち、サブプライムローン問題が顕在化した以降は、世界的な景気先行き不安とインフレ懸念が台頭し、損失穴埋めのために売却を検討する機関投資家の動きが活発化した。また、すでに述べたとおり、香港でも資金調達が困難になってきており、一部の香港デベロッパーが利益を確定した保有不動産を売り出しはじめた。
しかし、売却のみが市場における趨勢になっているというわけではない。問題を抱えた機関投資家が売却する不動産を購入しようと考える機関投資家が必ず存在する。外資は、概してグレードの高い物件をポートフォリオに組み込む傾向が強く、昨年半ば以降の売買においても、外資同士の売買が目立つ。最近の売却傾向は、機関投資家やデベロッパーが、「市況により影響を受けた自身の問題」に端を発しているものである。
世界経済の減退懸念と中国国内での金融引き締め政策の状況下、中国不動産市場への積極展開を考える外資の機関投資家の見方は、実は以前とほとんどかわっていない。圧倒的な需要を背景とする中国不動産価格の長期的上昇と人民元の切り上げ期待は、そう簡単に崩れるものではない。とくに、人民元の切り上げに期待を寄せない機関投資家はいないだろう。
現在、人民元の切り上げは中央政府の厳しい監視下に置かれている。小幅な調整を続ける一方、金利の引き上げなどでインフレを吸収しようとしている。外資の機関投資家の間では、金融引き締め政策はそろそろ限界に達しつつあるとの見方が強くなってきている。現在、外貨が溜まり込むとマネーサプライが増え続ける構造となっている。いずれ、人民元の切り上げ幅を拡大して、マネーサプライを減らす政策を打たざるをえない状況がやってくるだろうと見越しているのである。中央政府の政策的ジレンマの構造は、簡単には崩れないとの見方が強いのである。
市況の変化で売却を進めざるをえない機関投資家やデベロッパーがいることは、「不動産価格の上昇」と「人民元の切り上げ」期待を抱く外資の機関投資家にとってチャンスと映る。たとえば、今年5月に売却されたグレードAオフィスの「世紀商貿広場」は、4万5千元/平米で取引された。周辺の価格相場が5万元/平米以上といわれており、相場より安く購入できる可能性を示唆した取引事例として注目された。
現在のところ、昨年半ば以前の状況とは違う形で、売却と購入における思惑が一致している場合が多いように感じられる。とくに、06年7月以前に海外SPCが購入した不動産に関しては、株式をつうじて物件売買が可能であることから人気が集まっている。
今後、この動向がどのように変化するかは、今後の中央政府の経済政策が大きなキーポイントとなるだろう。
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情報提供:
Stasia Capital Holding Limited
Stasia Capital Holding Limited2008/08/01 更新
筆者:安田明宏氏
Stasia Capital調査部主任研究員
Stasia Capital Holding Limited (ステイジア・キャピタル)
[住所] 上海市長楽路801号華爾登広場203室
[電話] 021-5404-6486 / [FAX] 021-5404-5368
[E-mail] yasuda@stasiacapital.com
[URL] http://www.stasiacapital.com
Stasia Capital調査部主任研究員
プロフィール…名古屋大学大学院文学研究科博士課程単位取得満期退学。インドネシア・スラバヤ国立大学大学院国家教育研究科博士課程留学。専攻は文化人類学。
Stasia Capital Holding Limited (ステイジア・キャピタル)
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