中国業界人記事
資金繰りに困るデベロッパー
昨年10月、中国人民銀行が年末の融資残高を10月の水準に調整するよう通知(人民元貸出残高の総量規制)をだしたように、預金準備率の断続的な引き上げに加えてさまざまな金融引き締め政策が発表されている。
金融引き締め政策の影響を受け、資金繰りに窮する企業が現れはじめたといわれている。これは、不動産開発をおこなうデベロッパーも例外ではく、倒産が相次ぐのではないかとの憶測も流れている。さらに、不動産融資に関しては、今年2月、中国人民銀行上海本部の胡平西副主任が、不動産融資に対して厳格に管理を続ける旨を発表した。昨年9月に発表された住宅ローン政策(2件目以降の住宅購入に関する頭金比率の引き上げ)や株式市場からの資金流入の停滞なども影響し、昨年の後半から、不動産の取引量と価格の下落基調が明確になり、銀行も融資をしづらい状況になった。
土地を保有し、開発を進めなければ資金が回収できないデベロッパーにとっては、銀行からの融資が受けられないのは死活問題である。今年、本格的に資金調達先の模索がはじまった。まず資金調達先として考えられるのは株式市場である。香港株式市場を見てみると、今年からいくつかのデベロッパーが株式発行を取りやめあるいは延期している。1月には昌盛中国地産が11億2000万香港ドル規模の株式発行を取りやめたほか、3月には恒大地産が165億香港ドル規模の株式発行を、6月には宝龍地産が8億香港ドルをそれぞれ延期している。建業地産が6月に13億7000万香港ドルの株式を発行できたものの、いくつかの中国大陸の大手デベロッパーによる株式発行が未定の状態となっている。香港においては、世界的な景気減速の懸念と信用縮小の影響から、株式市場では機関投資家などが消極的な態度をとっており、確実に開発資金を得ることができるかどうか不透明な状況となっている。このまま資金調達にメドがつかない状況が続くならば、開発スピードが大幅に減速する可能性がでてくる。
中国大陸の株式市場で調達した場合も、必ずしもそのまま開発に資金を回せるとは限らない。今年2月、万科企業は、昨年に実施した追加株式発行のうち、9億8400万元を開発資金より運転資金に回すことを発表した。株式上場している企業でさえ、運転資金に窮する状況があることが判明したわけである。これは、株式上場していない企業の資金繰りの悪化を想像させるものでもある。
中国のデベロッパーは、土地使用権と建築コストに資金を投じ、開発がある一定レベルまで進んだら物件を予約販売する(預售房)。ここで資金を回収するわけだが、この資金は次の開発に流用されるのが通常で、自転車操業的な開発が続けられている。途中で資金繰りに問題が生じて不良債権化する開発案件も多い。いうまでもなく、このような自転車操業を続けるデベロッパーは、概して体力のない未上場の中小である。銀行からの融資がなくなるという事態は、自転車操業に釘がさされることになり、あとにも先にも進めなくなることを意味する。
銀行からの融資を頼りにしている中小にとっては、金融引き締め政策は相当厳しいものになっているはずだ。上場した大手も、株式市場の低迷により、資金調達が困難になっている。仮に、調達できたとしても、金融引き締め政策が継続されている状況下では、どこまで開発資金がもつか、常に不安と隣り合わせの状況が続くことになる。
現在の金融引き締め政策下で、どれだけのデベロッパーが倒産しているのか、実際にはよくわかっていない。各種報道を見ていても、具体的な数字というのはでてこないし、統計上の数字も当てにならない。「今後、引き締め政策が継続されるなら、デベロッパーの倒産数が増えるだろう」という予測がでてくる程度である。あくまで、上記で述べたとおり、上場した大手の動きから、その他を推測することしかできない。しかし、大手が困っていて、中小が困っていない、ということはないだろう。
なお、一部では、デベロッパーの数そのものが多すぎるので、金融引き締め政策によって淘汰されるならば、不動産市場にとってはよいことかもしれないという見方がでている。たとえば、今年5月に発生した四川大地震では、手抜き工事に対する批判が噴出した。手を抜くことで利益を得るような企業が淘汰されるならば、不動産市場の健全化という点では、よい方向に働く可能性が十分にあるだろう。
昨年10月、中国人民銀行が年末の融資残高を10月の水準に調整するよう通知(人民元貸出残高の総量規制)をだしたように、預金準備率の断続的な引き上げに加えてさまざまな金融引き締め政策が発表されている。
金融引き締め政策の影響を受け、資金繰りに窮する企業が現れはじめたといわれている。これは、不動産開発をおこなうデベロッパーも例外ではく、倒産が相次ぐのではないかとの憶測も流れている。さらに、不動産融資に関しては、今年2月、中国人民銀行上海本部の胡平西副主任が、不動産融資に対して厳格に管理を続ける旨を発表した。昨年9月に発表された住宅ローン政策(2件目以降の住宅購入に関する頭金比率の引き上げ)や株式市場からの資金流入の停滞なども影響し、昨年の後半から、不動産の取引量と価格の下落基調が明確になり、銀行も融資をしづらい状況になった。
土地を保有し、開発を進めなければ資金が回収できないデベロッパーにとっては、銀行からの融資が受けられないのは死活問題である。今年、本格的に資金調達先の模索がはじまった。まず資金調達先として考えられるのは株式市場である。香港株式市場を見てみると、今年からいくつかのデベロッパーが株式発行を取りやめあるいは延期している。1月には昌盛中国地産が11億2000万香港ドル規模の株式発行を取りやめたほか、3月には恒大地産が165億香港ドル規模の株式発行を、6月には宝龍地産が8億香港ドルをそれぞれ延期している。建業地産が6月に13億7000万香港ドルの株式を発行できたものの、いくつかの中国大陸の大手デベロッパーによる株式発行が未定の状態となっている。香港においては、世界的な景気減速の懸念と信用縮小の影響から、株式市場では機関投資家などが消極的な態度をとっており、確実に開発資金を得ることができるかどうか不透明な状況となっている。このまま資金調達にメドがつかない状況が続くならば、開発スピードが大幅に減速する可能性がでてくる。
中国大陸の株式市場で調達した場合も、必ずしもそのまま開発に資金を回せるとは限らない。今年2月、万科企業は、昨年に実施した追加株式発行のうち、9億8400万元を開発資金より運転資金に回すことを発表した。株式上場している企業でさえ、運転資金に窮する状況があることが判明したわけである。これは、株式上場していない企業の資金繰りの悪化を想像させるものでもある。
中国のデベロッパーは、土地使用権と建築コストに資金を投じ、開発がある一定レベルまで進んだら物件を予約販売する(預售房)。ここで資金を回収するわけだが、この資金は次の開発に流用されるのが通常で、自転車操業的な開発が続けられている。途中で資金繰りに問題が生じて不良債権化する開発案件も多い。いうまでもなく、このような自転車操業を続けるデベロッパーは、概して体力のない未上場の中小である。銀行からの融資がなくなるという事態は、自転車操業に釘がさされることになり、あとにも先にも進めなくなることを意味する。
銀行からの融資を頼りにしている中小にとっては、金融引き締め政策は相当厳しいものになっているはずだ。上場した大手も、株式市場の低迷により、資金調達が困難になっている。仮に、調達できたとしても、金融引き締め政策が継続されている状況下では、どこまで開発資金がもつか、常に不安と隣り合わせの状況が続くことになる。
現在の金融引き締め政策下で、どれだけのデベロッパーが倒産しているのか、実際にはよくわかっていない。各種報道を見ていても、具体的な数字というのはでてこないし、統計上の数字も当てにならない。「今後、引き締め政策が継続されるなら、デベロッパーの倒産数が増えるだろう」という予測がでてくる程度である。あくまで、上記で述べたとおり、上場した大手の動きから、その他を推測することしかできない。しかし、大手が困っていて、中小が困っていない、ということはないだろう。
なお、一部では、デベロッパーの数そのものが多すぎるので、金融引き締め政策によって淘汰されるならば、不動産市場にとってはよいことかもしれないという見方がでている。たとえば、今年5月に発生した四川大地震では、手抜き工事に対する批判が噴出した。手を抜くことで利益を得るような企業が淘汰されるならば、不動産市場の健全化という点では、よい方向に働く可能性が十分にあるだろう。
以前のコラム
フィールドワークとしての中国不動産市場 第11回:政策的ジレンマの中における中国不動産投資(1)
フィールドワークとしての中国不動産市場 第10回:内装狂想曲―共有スペースの私有化―(後編)
フィールドワークとしての中国不動産市場 第9回:内装狂想曲―共有スペースの私有化―(中編)
フィールドワークとしての中国不動産市場 第8回:内装狂想曲―共有スペースの私有化―(前編)
フィールドワークとしての中国不動産市場 第7回:第11期全人代第1回会議からみる不動産市場(後編)
フィールドワークとしての中国不動産市場 第6回:第11期全人代第1回会議からみる不動産市場(中編)
フィールドワークとしての中国不動産市場 第5回:第11期全人代第1回会議からみる不動産市場(前編)
フィールドワークとしての中国不動産市場 第4回:静安寺の風景(後編)
フィールドワークとしての中国不動産市場 第3回:静安寺の風景(前編)
フィールドワークとしての中国不動産市場 第2回:統計の数字と一次資料
フィールドワークとしての中国不動産市場 第1回:統計嫌いの不動産市場調査
フィールドワークとしての中国不動産市場 第11回:政策的ジレンマの中における中国不動産投資(1)
フィールドワークとしての中国不動産市場 第10回:内装狂想曲―共有スペースの私有化―(後編)
フィールドワークとしての中国不動産市場 第9回:内装狂想曲―共有スペースの私有化―(中編)
フィールドワークとしての中国不動産市場 第8回:内装狂想曲―共有スペースの私有化―(前編)
フィールドワークとしての中国不動産市場 第7回:第11期全人代第1回会議からみる不動産市場(後編)
フィールドワークとしての中国不動産市場 第6回:第11期全人代第1回会議からみる不動産市場(中編)
フィールドワークとしての中国不動産市場 第5回:第11期全人代第1回会議からみる不動産市場(前編)
フィールドワークとしての中国不動産市場 第4回:静安寺の風景(後編)
フィールドワークとしての中国不動産市場 第3回:静安寺の風景(前編)
フィールドワークとしての中国不動産市場 第2回:統計の数字と一次資料
フィールドワークとしての中国不動産市場 第1回:統計嫌いの不動産市場調査
情報提供:
Stasia Capital Holding Limited
Stasia Capital Holding Limited2008/11/26 更新
筆者:安田明宏氏
Stasia Capital調査部主任研究員
Stasia Capital Holding Limited (ステイジア・キャピタル)
[住所] 上海市北京西路1701号静安中華大厦703室
[電話] 021-6288-3917 / [FAX] 021-6288-3991
[E-mail] yasuda@stasiacapital.com
[URL] http://www.stasiacapital.com
Stasia Capital調査部主任研究員
プロフィール…名古屋大学大学院文学研究科博士課程単位取得満期退学。インドネシア・スラバヤ国立大学大学院国家教育研究科博士課程留学。専攻は文化人類学。
Stasia Capital Holding Limited (ステイジア・キャピタル)
[住所] 上海市北京西路1701号静安中華大厦703室
[電話] 021-6288-3917 / [FAX] 021-6288-3991
[E-mail] yasuda@stasiacapital.com
[URL] http://www.stasiacapital.com
中国業界人記事 一覧









