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巻頭インタビュー
理光 (中国)投資有限公司総経理 新村悦広 氏
「環境経営」のトップランナー 「信頼と魅力の世界企業」の実現へ

現経済同友会代表幹事の桜井正光氏が社長時代、「環境経営」についての薫陶を受けたと語る新村総経理。欧州駐在時代、信号が赤の場合には車のエンジンを止めること、風呂場のタオルは毎日替えないと言われたという。
気候温暖化、水質汚濁、地盤沈下、大気汚染、砂漠化・・・急速な経済成長のひずみとして様々な環境問題が露見する中、中国政府は環境関連立法の整備を急ぐなど、対策を講じ始めている。そのなかで企業はどのような取り組みをしていくべきか――。企業の社会的責任(CSR)にいち早く目覚め、「環境経営」のトップランナーとしてひた走るリコー中国。目指すは「信頼と魅力の世界企業」だ。

ISO14001認証を取得
今年6月5日、全世界にあるリコーグループの広告塔の灯火が消えた――。
正確には「消灯した」と記すべきだろう。リコーグループは、国連が定めた「世界環境デー」である6月5日を「RICOH GLOBAL ECO ACTION」と呼び、社員一人ひとりが地球環境について考え、行動をとるように呼びかけたのだという。「消灯」はそのグループ全体のイベントの一つだった。
「環境経営は社員全てが参加しなければ成り立ちません。一人ひとりが認識を持つこと。そのためには、まず経営のトップから語りかけることが重要です」――
そう断言するのはリコー(中国)投資有限公司の新村悦広総経理だ。リコー入社後、トップ層から薫陶を受けてきたという新村総経理は、海外畑を歩む中で「環境」を経営の柱とするという選択の正しさを確信していった。とくにアメリカ駐在時代は、当時の吉田勝美・リコーコーポレーション会長現(株)リコー海外マーケティング担当専務が3カ月毎に開催する米州販社社長会環境会議で、環境活動は強制するものではなく自主的に行うもの、トナー回収といったリサイクルの奨励、工場のゼロウェイストへの努力、省エネに対する関心の高さを、又日本に帰国後の海外事業本部在職中は、欧州における環境KPIを経営の基本とする企業のあり方をつぶさに見てきたという。
そして、04年に上海に赴任。意識、行動両面に渡って不十分なレベルにとどまっていたリコー中国(販売・サービス会社)に対して自ら改革の大なたを振るうことになる。
「ゴミの分別、食べ残し、モラルの一つをとってみても環境に対する認識が低かった。「環境経営」なくして成長戦略展開はないことを見せたかった」 (新村総経理)。
新村総経理の奮闘が始まった。中期経営計画(2005〜2007年)を策定し、(1) 環境法規制などの情報収集体制構築(2) 使用済製品「回収・処理」の実施 (3) EMSの構築 (ISO14001認証取得)を三本柱とした。オフィスの紙削減、省エネ活動、ガソリン使用量削減、ソイインクを使ったカタログ制作、環境関連DBの整備・充実。そして今年は部門評価に環境KPIを導入、代理店に対する環境教育の取り組みを開始。……ありとあらゆる施策を実行した。一方、地域社会への貢献をうたい、社員全員を動員しての公園のゴミ拾い活動、植樹活動も実施、社員全員が積極的に環境経営に関わるように奨励したという。
改革の成果は今年現れた。環境ISOと呼ばれるISO14001認証を販売・サービス会社として取得したのである(07年7月)。「環境経営に待ったなし!」という新村総経理。そして同グループ社員たちの信念と熱意は、予定より1年前倒ししての計画達成につながった。ちなみに、中国に在籍する外資企業のなかで販売・サービス会社が取得した事例はごく稀であるという。
11月9日、リコー中国はグループ傘下各社の代表者、日本本社からの「環境」総責任者酒井清専務等、総勢150名を上海に集め、「中国極環境経営大会」を開く。設計・開発、製造、販売・サービス、ロジスティックにいたる十数社の代表者たちによる「環境経営」の成果発表と成功事例水平展開の場とするのである。リコーグループ全体で「環境経営」発展途上エリアと見なされていたこの中国では初の試みである。新村総経理は今後も中国グループ間での「環境コミュニケーション」を重視、社内外での情報開示を通じることで、社会貢献に寄与していきたいとしている。

「環境」と「利益」をバランスで考えるのではなく、「環境」と「利益」は同じ方向を向いている――。リコーグループの「環境経営」のコンセプトとは、「環境保全活動」で「利益を獲得」し、「利益創出活動」で「環境保全」を行うことにある。
多くの企業は「環境対応」レベル
ところで「環境経営」について、ひとつ念を押しておかなければならないことがある。この言葉は現経済同友会代表幹事の桜井正光氏が社長を務めた90年代後半、初めて唱えたコンセプトである点だ。
「環境対応は経営コスト」という認識が当時の潮流だった。そこへ、「環境と利益創出は同軸」という持論を打ち出し、それを徹底して経営に反映した。
同グループでは企業の「環境」への取り組を三段階に分けている。初期段階は「環境対応」である。法規制や他社動向などの外圧に応じた受け身の活動である。次にあるのが「環境保全」。この段階では、地球市民として使命感をもって取り組み、事業や製品の環境負荷を低減するための対策を実施することが主な活動となる。そして三つ目にあるのが「環境経営」だ。リコーグループでは、「全員参加の活動」と「環境技術開発」で、事業活動の環境負荷低減と経済価値の創出を同時に追求しているという(リコー「環境経営報告書」より)。
多くの企業が唱える"エコ・コンシャス"のレベルが初期段階の「環境対応」にとどまっていることは容易に想像できる。「持続可能な発展のために環境経営は欠かせない」――このことに気づき、実践の域にまで到達している。
桜井前社長の環境経営に対する思いを、今年就任した近藤史朗社長が引き継ぎ、「企業の社会的責任を果たすことを企業市民、地球市民の義務としてとらえ、自ら高い目標を設定し、継続的に責任と使命感を持って活動に取り組んでいく決意を表明している(「リコーグループ社会的責任経営報告書2007」)。日本がバブル経済を謳歌していた頃を思い浮かべてみたい。多くの企業が盛んにCIを唱え始めた。そして文化(メセナ)を語り、愛(フィランソロピー)を追求した。しかし、業績が悪化した途端どうだろう。「最も重要なのは利益の確保。生存こそ重要」――経営の効率化の名のもとリストラ策を講ずるのに躍起になり、「社会貢献」などどこ吹く風という体にあったのが「失われた90年代」の企業の実態ではなかったか。
そして、業績回復を背景に、企業はCSRのあり方に関心を示し、再び饒舌になり始めた。しかし、「メセナ」「フィランソロピー」とは表現の仕方こそ違えども、それはバブル経済時代の様相と大差はないのではないか。なぜなら、「利益を上げなければ社会貢献はできない」という経営者の本音が見え隠れするからだ。多くの企業にとって「利益確保」と「環境」は別のベクトルで存在するというのが一般的認識だといえる。

企業活動のライフサイクルと融合
しかしリコーグループは敢えて異なるとらえ方をした。旧来の認識に戦いを挑んだ。
「環境に取り組まなければ企業の持続的発展は望めない」「事業と環境保全を別々に行うのではなく、事業の中に環境の視点を融合させる」――そんな逆転した発想から出発したリコーグループの「環境経営」は現在、ますます"深化"を見せている。
たとえば、(機器の)「使いやすさ」と「省エネ」の両立への配慮がある。また環境影響化学物質を含有しない製品づくりを徹底させ、代理店向けにトナーの「回収・処理」を実施するなど環境負荷の減少に努めているという。
ちなみにリコーの複写機は、機器の組立て・分解時間を極力短縮できるように設計面でも配慮、部品類の止め方、外し方まで工夫を施している。回収処理を簡便化し、ひいては物流コストの低減化もねらおうという算段である。まさに「製品の設計・開発」から「資材・製造」「販売・サービス」に至るまで、日々の企業活動のライフサイクル一つ一つのシーンで「環境保全」をとらえようという同社の思想が取り組みの一つひとつに反映されているのだといえよう。

事業統括部総経理の竹中信雄氏(左)、環境スペシャリストの藤野年喜氏(右)、 EMS高級顧問の田中光男氏(右から2人目)らと。
リコーグループの「三愛」精神
リコーグループは環境負荷を今年、対2000年度比で15%、10年には20%削減することを目指している。京都議定書が定める目標値を大きく上回る。
「『環境保全活動』で『利益を獲得』し、『利益創出活動』で『環境保全』を行っていくのです。『知識創造を簡単に』『人にやさしい』『地球にやさしい』をコアバリューとして、『価値あるマーケットシェア獲得』による『価値ある成長戦略』と『価値ある人材の育成』による『高効率経営』を通して長期にわたって発展空間ある会社に育てていきたい 」(新村総経理)。
その徹底した「環境経営」への信念は今後も揺らぐことはないだろう。オリンピック、万博、広州アジアオリンピックを経て、中国経済が仮に安定成長の時代に入ったとき、中国進出企業はいかに差別化を試み、発展を期していくのか――。そのカギはやはり「環境」への取り組みにある。「単発のアクションだけではダメ。(環境経営は)自身に課せられた使命として認識し、持続的発展につなげていく必要があります」(同)
現在リコー中国は中期経営計画を策定中だが、「中国ライク」な取組みとして、中国内で完結できる「設計」「生産」「販売・サービス」「物流」四位一体のSCM強化等と共に、業界をリードする「環境経営」推進を目指しているという。
新村総経理は「環境経営」のトップランナーとしての矜持を胸にさらに言葉を強める。「私たちの中国、私たちの地球の環境を守るために、全社をあげて環境経営に取り組んでいきます」 そう語る新村総経理の後ろにはリコーグループの創業理念「三愛精神」の言葉が掲げられている。「人を愛し、国を愛し、勤めを愛す――」。
情報提供: Whenever CHINA 07年11月号
2007/11/07 更新
新村悦広 氏
理光 (中国)投資有限公司総経理、理光電子技術(中国)有限公司董事長兼総経理
プロフィール…静岡県出身。中央大学商学部卒業後、1975年、株式会社リコー入社。入社以来主に海外畑を歩き、アルゼンチン、スペイン、イギリス、イタリア、アメリカなどに駐在。2003年、株式会社リコー海外本部 マーケティング統括室長を経て04年理光 (中国)投資有限公司総経理、理光電子技術(中国)有限公司董事長兼総経理に就任。リコーグループ執行役員も兼ねる。
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