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巻頭インタビュー
三井住友銀行常務執行役員中国本部長兼上海支店長 正木浩三 氏
発展戦略に独自のビジョン持ち前の総合力とグループ連携を前面に

「従業員の育成は今後の事業テーマ。幹部養成をふくめ、バリューのつく研修を行っていきたい」(正木氏)。すでに成果は出ている。中国全拠点を統括する人事部長とコンプライアンスのヘッドに現地従業員を登用したほか、蘇州、天津出張所の所長も中国人だ(うち蘇州は女性)
WTO加盟後の規制緩和の波を受け、中国の銀行業を取り巻く環境はめまぐるしく変貌を続ける。その中で、三井住友フィナンシャルグループ傘下の三井住友銀行は、充実した拠点ネットワークや、シンクタンク・リース・経営コンサルティング・カードなどグループ各社との連携を強みとして、ワンストップ・サービスを中国進出企業に向けて提供している。相次いで現地法人化する他メガバンクとは一線を画し、独自の発展戦略を貫く同行。IBLAC(※)の正式メンバーとして現地でのプレゼンスも一段と強まっている。
(※)IBLAC: 全称International Business Leaders’Advisory Council for the Mayor of Shangha(i 上海市市長国際企業家諮詢会議)。1998年に当時の朱鎔基上海市長(前首相)の発案により提議され、翌年89年より開催されている会議。正式メンバーは 18社。うち日系は野村證券、東芝ふくめ3社のみ。「500強」のCEOがオブザーバーを含め200名近く参加する大規模な催しとなっている。

WTO加盟後の規制緩和の波に 域内ネットワークは順調に拡大
――銀行業を取り巻く大きな環境の変化のなかで、積極的なアジア戦略をとってこられました。
私が着任した2003年1月、中国はすでにWTOに加盟していましたが、外資銀行がお客様に提供できる業務には多くの制限がありました。人民元業務は上海や広州などごく限られた一部の都市でしか認められておらず、人民元の先物予約も外資系銀行には開放されていなかったのです。上海支店のスタッフ数も110名と、現在の360名という人員規模と比べると小さなものでした。
その後、人民元業務を提供できるようになったほか、デリバティブ業務も取扱いが認められ、トップランナーとなるべく全力疾走してきたというのが実感です。お客様に対しては実務面で役に立つシステム商品の開発と提案、企業内部では人事管理、労務管理、コンプライアンスの形成や内部統制の案件などに注力してきました。
現地職員の人事制度と労務管理制度も作成いたしました。昨年の12月、「中国本部」と「中国統括部」を設立。本店機能のうち、中国に関わる権限を大きく現地に委譲することにしました。従来以上にお客様に密着した迅速で適確な判断と決定が出来る体制となっています。
拠点ネットワークも拡充しました。杭州支店を04年に開設、今年3月には天津の濱海、四月には蘇州の工業園区にそれぞれ出張所を出し、現在、支店5カ所、出張所2カ所、事務所4カ所(北京、瀋陽、大慶、重慶)という構成になっています。関係ご当局のご承認を経て年内には北京にも支店をオープンする予定です。
非日系企業の案件も増えてきました。台湾・香港地区、大陸の非日系をひとくくりにしたマーケティングを行うべく、非日系専門の部隊を設置しております。

――中国は「世界の工場」から「世界の市場」へと変貌。顧客ニーズにはどんな変化が見られますか?
進出企業の「内販」への取り組みが目立ってきたなかで、売掛債権をどう回収していこうかという案件が多くなっているとともに、第二、第三の設備投資、人民元に対する貸し金ニーズが増えています。
一方、中国で大規模にグループ運営していくうえで、資金をどう調達し効率的に運用していくかという動きも顕著です。
激動する経営環境に対応するため、CMS(CashManagementService)やディーリング、企業調査などといった各種専門の部隊を上海に設置したほか、高度化・複雑化する業務への内部管理体制を強化すべく、本店の監査専門部署も配置しています。無駄な借入金をなくせるようにプーリング(グループ企業の資金管理を一元化する手法で、取引銀行に開設したマスター口座にグループ各社の資金繰りを集中させる等)を提案したり、コンプライアンスに対応できるサービスを提供したりするなど、いかに早く変化を捕らえ、正確な情報を提供し、ソリューションを提供できるかに力を注いでいます。そして、こうしたことが中国において金融サービスを差別化するうえで大きなポイントになります。

現地法人化を“静観”するこれだけの理由 まずはお客様の目線に立ったサービスを
――日本ではグループ会社がカード事業を強化、他社に先駆けて銀聯カードの発行も予定するなど話題をさらっています。
三井住友フィナンシャルグループの傘下にある三井住友カードが、年内をめどに新たなクレジットカードを発行します。中国国内の銀行が加盟する決済ネットワーク会社「中国銀聯」との提携によるもので、中国では不可欠な銀聯による決済サービスを、日本勢では初めて利用を可能にしました。あくまで日中間の渡航者からのニーズに対応するかたちで実現するものですが、日本初、世界的にも数カ国目という取組みが注目を浴びることとなっています。
銀行業務以外に対するお客様のニーズは増えており、三井住友フィナンシャルグループ各社も中国に現地法人を次々に設立しています。
たとえば、シンクタンクである日本総合研究所は上海にコンサルティングを担当する日綜(上海)投資諮詢有限公司と、システムを担当する日綜(上海)信息系統有限公司をそれぞれ設立するなど、様ざまな経営コンサルティングのニーズに対応できる体制が完備されてきました。そのほか、三井住友銀リースは広州に広州三井住友銀租賃有限公司、上海にその分公司を、大和證券SMBCは上海に海際大和證券有限公司(合弁)をそれぞれ設立しています。
弊行のみならずグループ全体、また提携企業との連携を強めながら、お客様にワンストップ・サービスを提供できるように努めているのです。

三井住友銀行はIBLAC(※)の正式メンバーとして現地でプレゼンスを一段と強める。「CSR(Corporate Social Responsibility)にも果敢に取り組んでいきたい」と抱負を語る正木氏
――ライバルのメガバンクは現地法人していますが御行の予定は?
現在、OCSグループの海外拠点は、現地法人が10社、合弁会社が四社、駐在員事務所が三カ所、代理店が209地点となっており(07年7月末現在)、世界200の国・地域で事業展開していることになります。 
弊社では、全世界を網羅するネットワークと連動させて、クーリエビジネスのよりいっそうの拡充を図っていく予定です。 
OCS グループのグローバル戦略のひとつとして、香港地区、シンガポール、ロンドン、ブリュッセル、マイアミ、ロサンジェルス、ドバイに物流ハブを設け、荷物の集積および発送の拠点としていることが挙げられましょう。また、アジア地域でのさらなるビジネス拡大に備え、インドで合弁会社を設立するなど、体制強化の施策を講じています。 
香港国際空港内の貨物上屋である「アジア・エアフレートターミナル」内にスペースを借り、香港ハブの強化を図ったこともアジア重視の表れといえるでしょう。香港ハブは、ヨーロッパやアジアへの起点となる重要ハブであり、その機能充実は転送スピードの強化に直接つながってきます。 
また、ハブ同士を有機的に結合していくだけでなく、各地域でハブ&スポークシステムを構築することで、より速く、確実にお客様のお荷物を配送できるように努めているのです。 
Fedex、DHL、UPS、TNTといった4大インテグレーターに負けることないよう、今後も各拠点を強化し、弊社サービスをご利用いただける皆さまにご満足いただけるロジスティックスサービスを提供していく予定です。 
海外の国・地域から日本を経由せず他地域へとモノを搬送する動きも活発になってきています。中国発ヨーロッパ宛、または他アジア国・地域宛の物件の配送体制の強化も行っています。

――ライバル各社とのサービスの差別化はどのように図っていますか。
私たちはホールセールに特化した事業戦略を行っていることから、現段階では現地法人化を見送り、事態を静観しています。
現地法人化のメリットは何かというと、拠点開設後速やかに人民元業務の取り扱いが可能になることです。以前あった地域制限は昨年12月になくなりましたが、新しい支店をつくっても3年間は人民元の業務ができません。(現地法人化すると)その制限に拘束されることがなくなるのです。
しかし、一方で(現地法人化には)デメリットもあります。
まずは預貸比率規制の問題が挙げられます。(現地法人化をすると)全預金量の75%しかお金を貸すことができなくなります。すでにこの数字を超えている場合は五年以内に規定の比率内に収める必要があります。
ちなみに、外資系の銀行では、おそらく預貸比率は200から600%まで行っているでしょう。したがって、外資銀行は現地法人化後、(将来緩和される余地は残っていますが)預金額を相当増やすか、貸し金を減らすかのどちらかの対応に迫られることになるのです。
もうひとつは大口一社規制です。現地法人は、ひとつのグループ企業に対して、資本金の10%にあたる金額しか貸し金や与信を行ってはいけないことになっています。それが、支店であれば制限がゆるく、擬制資本金の10%を超える貸し金の合計が資本金の8倍以内であればよいことになります。大口の貸し金を行うには外国銀行の支店というステイタスの方が有利なのです。

――御行にとっては、(現地法人化は)デメリットのほうが多いのですか?
原則東京本店のサーバーとつながったシステムは許されず、現地法人において独立したシステムをつくらねばならないのも大きな課題だといえます。
また現地法人になると、内部管理体制、財務内容などに基づき、総合的に格付けされることになります。そして最高格付けがされれば、銀行は一年間に複数の支店開設を申請することが出来ますが、従来通りご当局の認可が必要ですので、現地法人の格付や業務内容によっては、必ずしも希望通りに開店出来るとは限りません。
私ども三井住友銀行では、常にお客様の目線に立って、お客様にとってよい銀行とは何か、を最優先に考えております。リテール部門に注力する場合は別として、総合的にお客様にとってメリットがまだ見出し難いことから現地法人化の申請を提出していません。
今後申請をするか否かは、今後の動向を踏まえて検討していきたいと思います。

「LEAD the VALUE計画」 グローバル成長戦略を推進
――御行にとっては、(現地法人化は)デメリットのほうが多いのですか?
今後お客さまの要望にさらにお応えしていくために、我々は新しいステージに行かなければならないと考えています。そこで今年度より「LEAD theVALUE計画」という中期計画をスタートさせました。
「最高の信頼を得られ世界に通じる金融グループ」を目指していくことを基本方針とし、弊行の強みである「先進性」「スピード」「提案・解決力」の3つの力の極大化を目指します。
特にグローバルマーケットに於ける成長戦略としては、アジアをマザーマーケットとしており、昨年だけでアジア太平洋地域に五カ所に新店舗を開設しました。うち2店が中国大陸で、弊行にとっても今後の成長の源泉としたいと思っております。組織の強化やグローバルな連携体制の構築、そして、このたび準備認可を取得し開設を目指しております北京支店を含めた拠点ネットワークの拡充等、新しい取組みを進めています。
もともと当行が強みを発揮するトレードファイナンスについても、ヘッドを置くロンドンを中心に力を入れていくほか、コンサルティング、システム商品の開発、コンプライアンスへの対応等、きめ細かいサービスを提供していくなかで当行のブランド力を高めていきたいと思います。
徹底したお客様第一主義とグループの総合力によるワンストップ・サービス、これが中国で当行が掲げる事業方針です。(了)
情報提供: Whenever CHINA 07年9月号
2007/09/17 更新
正木浩三 氏
三井住友銀行常務執行役員中国本部長兼上海支店長
プロフィール…1976年関西学院大学経済学部卒業後、旧住友銀行入行。香港支店、ロンドン支店勤務などを経て97年にサンフランシスコ支店長、99年に米州営業第一部長に就任。一貫して営業第一線を歩み、うち大半が海外勤務。2003年1月より中国業務の強化をミッションに上海支店長に就任、06年12月には中国内に設立された中国本部のヘッドとして中国本部長を兼務し、三井住友銀行中国ビジネスの総責任者となる。07年4月には常務執行役員、中国本部長兼上海支店長に就き、現在に至る。

三井住友銀行・中国統括部
[住所] 上海市浦東新区陸家嘴1000号 匯豊大廈30F
[電話] 021-6867-4750 / [FAX] 021-6841-5111
[URL] http://www.smbc.co.jp
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