ビジネス連載

日本の若者にとっても上海はすでに「隣町」感覚で往来ができる最も近い外国都市のひとつだ。「外商投資産業指導目録」の改定によって、これまで制限業種とされてきた分野にも外資導入が認められるようになった。国境を意識させない往来環境が整ってきたことで、新たな世代のパワーが今後も怒涛のごとく流れ込んでくることだろう。
変わる在上海の日本人像
「ここは一体どこの国なんだ!」――これは、地元上海の友人が、「休日に淮海路(上海で最も賑わう繁華街)を歩いていたら、最初から最後まで日本語が途切れなく聞こえてきた」と言ったあと、驚きとも嘆きともつかない声で叫んだ言葉です。確かに、上海を訪れる日本人の数は、最近になって更に膨れ上がったと感じます。中国への投資熱は一段落しましたが、上海へは、今もサービス業を中心に1日3社の勢いで日系企業の進出が続いています。
10月には羽田―虹橋間のシャトル便も開通しました。一昔前まで、上海にいる日本人と言えば、いわゆる中高年のネクタイ族と、一目でそれと分かる留学生だけでしたが、ここ数年で人的往来が活発化、多様化したため、上海に住む日本人群像も様相が一変してしまいました。
変わる在上海の日本人像
「ここは一体どこの国なんだ!」――これは、地元上海の友人が、「休日に淮海路(上海で最も賑わう繁華街)を歩いていたら、最初から最後まで日本語が途切れなく聞こえてきた」と言ったあと、驚きとも嘆きともつかない声で叫んだ言葉です。確かに、上海を訪れる日本人の数は、最近になって更に膨れ上がったと感じます。中国への投資熱は一段落しましたが、上海へは、今もサービス業を中心に1日3社の勢いで日系企業の進出が続いています。
10月には羽田―虹橋間のシャトル便も開通しました。一昔前まで、上海にいる日本人と言えば、いわゆる中高年のネクタイ族と、一目でそれと分かる留学生だけでしたが、ここ数年で人的往来が活発化、多様化したため、上海に住む日本人群像も様相が一変してしまいました。
高校生にとって上海は「隣町」?
今年の夏、近くの日本料理屋に入った時の事。メニューを見て「小姐(お嬢さん)!」と呼ぶと、「はーい」と元気な声が返ってきました。てっきり田舎から出てきたばかりの子だと思って中国語で料理を注文しようとすると、「すみません。日本語できますか?」と尋ねてきました。あまりに流暢な日本語に驚いて出身地を尋ねると、じつは彼女は日本の高校生だったのです。夏休みを利用して上海へアルバイトに来たのだと言います。
その高校生いわく、「このお店の客は100%日本人だし、間借りしている所は上海に駐在している親戚の家だから、家でも日本語で大丈夫。中国語を使うこともないし、生活に何の不自由もない」そうです。
更に、「中国の携帯電話も3G規格なら日本でそのまま使えるし、アルバイトで貯金した人民元も、中国銀聯カード(キャッシュカード)があれば、日本の銀行やコンビニで簡単に日本円が引き出せる」ので、携帯一つとキャッシュカード一枚だけで、気軽に行き来しているというのです。
この高校生に象徴されるように、日本から見た上海は、急速に「隣町」化が進んでいます。就職難で、日本で正社員になれなかった若者が、上海の日系企業に活路を求めてやってくる。こうした人たちは、今まで中国に縁もゆかりもなく、中国語を喋ったこともありません。しかし上海には、日本人だけを相手にする営業職や、日本での仕事の一部を上海にアウトソーシングしてバックアップするサービス職の需要がますます多くなっています。こうした職種には「言葉」のレベルというよりも、サービスをスムーズに実行するためのスキルやノウハウが求められてきます。こうしたニーズに呼応するように、あらゆる人材が可能性をかけて上海に入ってきているようです。
進むボーダーレス化
今年11月初め、国家発展改革委員会等は、「外商投資産業指導目録(外資導入のガイドライン)」を3年ぶりに改定しました(施行は12月1日)。新しい「目録」は、これまで制限してきたサービス業の参入を大幅に緩和し、サービスアウトソーシング業務などの参入を「奨励する」内容に改められています。つまり、これまでの外資導入は大成功を収め、外国の資本も技術も手に入れたのです。
残るは、サービス分野の「ノウハウ」や「知識」といったソフト部分の導入に力点を置いたと読み取れます。そのために、国境を意識させない往来環境を築き上げてきた中国政府は流石です。そして、世界の人材と知能を集約するための様々な施策が、今後次々と打ち出されるに違いありません。
これからは、日中間の経済交流がまた新たな段階を迎え、ボーダーレスの進化とともに、新世代のパワーがこの街のうねりとなって躍動する時代になるでしょう。
前回までの「中国路地裏経済漫歩」
中国路地裏経済漫歩 第8回:人気興隆、そしてブーム失墜へ 「土家焼餅」に見る上海外食産業事情
中国路地裏経済漫歩 第7回:「面子」語らずして中国経済は語れず 日本の「世間体」消費との大きな差異
中国路地裏経済漫歩 第6回:上海で19年繁盛し続ける老舗バー 変わらぬ経営スタイルが「伝説」に
このコラムは日本中小企業ネット@上海(http://sme.shanghai.or.jp/)のメールマガジンでも配信しています。
今年の夏、近くの日本料理屋に入った時の事。メニューを見て「小姐(お嬢さん)!」と呼ぶと、「はーい」と元気な声が返ってきました。てっきり田舎から出てきたばかりの子だと思って中国語で料理を注文しようとすると、「すみません。日本語できますか?」と尋ねてきました。あまりに流暢な日本語に驚いて出身地を尋ねると、じつは彼女は日本の高校生だったのです。夏休みを利用して上海へアルバイトに来たのだと言います。
その高校生いわく、「このお店の客は100%日本人だし、間借りしている所は上海に駐在している親戚の家だから、家でも日本語で大丈夫。中国語を使うこともないし、生活に何の不自由もない」そうです。
更に、「中国の携帯電話も3G規格なら日本でそのまま使えるし、アルバイトで貯金した人民元も、中国銀聯カード(キャッシュカード)があれば、日本の銀行やコンビニで簡単に日本円が引き出せる」ので、携帯一つとキャッシュカード一枚だけで、気軽に行き来しているというのです。
この高校生に象徴されるように、日本から見た上海は、急速に「隣町」化が進んでいます。就職難で、日本で正社員になれなかった若者が、上海の日系企業に活路を求めてやってくる。こうした人たちは、今まで中国に縁もゆかりもなく、中国語を喋ったこともありません。しかし上海には、日本人だけを相手にする営業職や、日本での仕事の一部を上海にアウトソーシングしてバックアップするサービス職の需要がますます多くなっています。こうした職種には「言葉」のレベルというよりも、サービスをスムーズに実行するためのスキルやノウハウが求められてきます。こうしたニーズに呼応するように、あらゆる人材が可能性をかけて上海に入ってきているようです。
進むボーダーレス化
今年11月初め、国家発展改革委員会等は、「外商投資産業指導目録(外資導入のガイドライン)」を3年ぶりに改定しました(施行は12月1日)。新しい「目録」は、これまで制限してきたサービス業の参入を大幅に緩和し、サービスアウトソーシング業務などの参入を「奨励する」内容に改められています。つまり、これまでの外資導入は大成功を収め、外国の資本も技術も手に入れたのです。
残るは、サービス分野の「ノウハウ」や「知識」といったソフト部分の導入に力点を置いたと読み取れます。そのために、国境を意識させない往来環境を築き上げてきた中国政府は流石です。そして、世界の人材と知能を集約するための様々な施策が、今後次々と打ち出されるに違いありません。
これからは、日中間の経済交流がまた新たな段階を迎え、ボーダーレスの進化とともに、新世代のパワーがこの街のうねりとなって躍動する時代になるでしょう。
前回までの「中国路地裏経済漫歩」
中国路地裏経済漫歩 第8回:人気興隆、そしてブーム失墜へ 「土家焼餅」に見る上海外食産業事情
中国路地裏経済漫歩 第7回:「面子」語らずして中国経済は語れず 日本の「世間体」消費との大きな差異
中国路地裏経済漫歩 第6回:上海で19年繁盛し続ける老舗バー 変わらぬ経営スタイルが「伝説」に
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情報提供:
Whenever CHINA 07年12月号
Whenever CHINA 07年12月号2007/12/21 更新
村岡健司 (むらおか・けんじ)氏
日中経済貿易センター 上海事務所所長
中国社会科学院 中日経済研究センター特約研究員
上海市外国投資促進中心高級顧問
日中経済貿易センター 上海事務所所長
中国社会科学院 中日経済研究センター特約研究員
上海市外国投資促進中心高級顧問
『週刊エコノミスト』(毎日新聞社)「チャイナウォッチ」にて連載中
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