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特別寄稿:法律講座 再説「労働契約法」の論点(2) 無固定期間労働契約の締結条件についての小考察
前回は、施行後もいまだ論議を醸し出している労働契約法の条項として、「無固定期間労働契約の締結条件」について考察を試みた。今回は、そのほか外資企業にとって関係が深いと思われる条項を抜粋し、その課題について筆者の見解を述べることにする。
2.サービス期間の違約金について(「労働契約法」第22条第2項)
「労働契約法」第22条第2項で「労働者がサービス期間の約定に違反した場合、約定に基づき雇用単位に違約金を支払わなければならない。当該違約金の金額は雇用単位が提供した研修費用を上回ってはならない。雇用単位が労働者に支払いを要求する違約金は、サービス期間の未履行部分に割り当てられるべき研修費用を上回ってはならない。」と規定している。
このような規定は、ある意味「違約金」と「賠償金」の概念を混同しており、2つの概念を同じものにしている。また「違約金」の懲罰という性質を大幅に削減し、労働者の違約コストを下げている。言い換えれば、労働者がサービス期間終了前に離職すれば、違約金として支払う最大の代償は雇用単位が労働者に支払った研修費用に過ぎない。しかし、この研修費用は個人の技能に転化し将来の収益につなげることができるものである。
勿論、「労働契約法」第90条の規定「労働者が本法の規定に違反して労働契約を解除した場合、又は労働契約で約定された秘密保持義務又は競業制限に違反し、雇用単位に損失をもたらした場合、賠償責任を負わなければならない。」によると、理論上、当該「賠償責任」は上記「違約金」と並存することができる。しかし将来の労働争議の仲裁及び司法の実践において、労働争議仲裁委員会及び人民法院が、雇用単位が既に研修費用により労働者に違約金を求めた後、再び研修費用の賠償責任を追及することを支持するかどうかは、今のところ明らかではない。

3.競業制限について(「労働契約法」第23条第2項)
「労働契約法」第23条第2項で「秘密保持義務を負う労働者に対して、雇用単位は労働契約又は秘密保持協議の中で労働者と競業制限条項を約定することができ、かつ労働契約解除又は終了後、競業制限期限内に月ごとに労働者に経済補償を支給する事を約定することができる。労働者が競業制限の約定に違反した場合、約定に照らして雇用単位に違約金を支払わなければならない。」と規定している。
本項は「労働契約又は秘密保持協議の中で」競業制限条項を約定すると規定しただけで、実務においては企業が労働者と独立した競業制限(競業禁止)協議を結ぶ可能性がある。契約自由の原則により内容が適当であれば、この独立した協議も合法かつ有効である。
しかし「労働契約法」第25条で「本法第二十二条および第二十三条に規定されている状況を除き、雇用単位は労働者と労働者が負担する違約金について約定してはならない。」と規定しており、違約金条項のない競業制限協議は全く意味のないものに等しい。このため違約金条項が無効であると認定されないように、雇用単位は競業制限条項を労働契約又は秘密保持協議に引き入れ、できるだけ独立した競業制限協議の締結を避けざるを得ない。

4.経済補償の基準について(「労働契約法」第47条第2項)
「労働契約法」第47条第2項で「労働者の月給が雇用単位所在の直轄市、区を設けている市級人民政府が公布する本地区の前年度従業員平均月給の3倍を上回る場合、その支払われる経済補償の基準は従業員平均月給の3倍の金額で支給され、その支払われる経済補償の年限は最高で12年を超えないものとする。」と規定している。
想像できるように、2名の労働者が同じ雇用単位で12年間以上働き、どちらも経済補償を享受することができ、その中の1名の賃金がちょうど「本地区前年度従業員平均月給の3倍」を超え(例えば1元のみ超える)、他の1名の給料が少し少なければ(例えば1元のみ少ない)、前者が入手できる経済補償金は後者のより大分少なくなるだろう。これは、前者の経済補償金が「上限」に封じられたからである。これは明らかに不公平なものである。

5.労務派遣による業種の範囲について(「労働契約法」第66条)
「労働契約法」第66条で「労務派遣は一般に臨時的、補助的又は代替的な業務職種に対し実施する。」と規定している。
全国人民代表大会常務委員会法制工作委員会が2007年12月付けで労働と社会保障部へ回答したものによれば、労務派遣は「補助性、代替性及び臨時性」という3つの原則(※)があるとされる。
言うまでもなく、このような解釈は一層の論議を呼ぶことになりかねない。
(※)労務派遣における3つの原則
  • 「補助性」:被派遣労働者を使用できる職務が企業の非主要業務の職務でなければならないことを指す。
  • 「代替性」:正社員が一時的に職場を離れ業務を行えない時に、はじめて労務派遣機関による被派遣労働者により臨時的に業務を代替して行うことを指す。
  • 「臨時性」:派遣期間が6カ月を超えてはならないことを指し、雇用期間が6カ月を超える職務については、企業は正社員を使用しなければならないとされる。

6.その他、論議となっている条項
このほかにも、対策を講ずる必要がある条項は少なくない。誌面スペースの都合により、ここでは、主要な論点の抜粋にとどめ別表に記すことにする。
労働契約法の解釈をめぐる論点(主要なものを抜粋)
条項 内容 課題とされる点
第4条第2項
(規章制度)
雇用単位が労働報酬、労働時間、休憩休暇、労働安全衛生、保険福利、従業員研修、労働規律及びノルマ管理等労働者の密接な利益に直接関わる規章制度或いは 重大事項を制定、改正または決定をする場合、従業員代表大会または従業員全体の討論を経て、草案と意見を提出し、労働組合又は従業員代表と平等な協議を経 て確定する。 規則と制度の制定要求について、本条第2項では「従業員代表大会」「従業員全体」「労働組合」及び「従業員代表」という多種の言葉を用いている点。
第8条
(雇用単位の告知義務と労働者の説明義務)
雇用単位が労働者を採用する際、労働者に対し勤務内容、勤務条件、勤務場所、職業上の危険、安全生産情況、労働報酬及び労働者が説明を求めるその他情況を 事実のまま告知しなければならない。雇用単位は労働者の労働契約に直接関係する基本情況を知る権利を有し、労働者は事実のまま説明しなければならない。 双方の告知義務について、雇用単位に事実通りに「労働者が説明を求めるその他情況」を告知するよう要求する規定は、範囲が広過ぎる点。(労働者本人に関係のないこと、例えば雇用単位の営業秘密、技術機密及び高級管理者と企業経営の決議に関わるものについては、雇用単位は労働者に明かすことを拒否する権利を有する)
第14条第2項
(無固定期間労働契約)
雇用単位と労働者は協議により合意に達すれば、無固定期間労働契約を締結することができる。以下の状況のいずれかに該当する場合、労働者が労働契約の継 続、締結を提起又は同意した場合、労働者が固定期間労働契約の締結を提起する場合を除き、無固定期間労働契約を締結しなければならない。
…(三)2回連続して固定期間労働契約を締結し、且つ労働者が本法第39条及び第40条第1項、第2項に規定されている状況にないとき、労働契約の締結を継続する場合。
労務派遣機関に被派遣労働者と無固定期間労働契約の締結を要求するのは適当ではないと考えられる点。また、法理上から見て、契約期間満了後、労使いずれの一方も引き続き契約を締結するかどうかの選択肢を有すると考えられる点。(※詳細は1月号26頁参照)
第20条
(試用期間の賃金)
労働者の試用期間中の賃金は、当該企業の同職場の最低賃金又は労働契約で約定した賃金の80%を下回ってはならず、併せて雇用単位所在地の最低賃金基準を下回ってはならない。 試用期間中の賃金について、2つの理解ができる点。
第22条第2項
(服務期間)
労働者がサービス期間の約定に違反した場合、約定に基づき雇用単位に違約金を支払わなければならない。当該違約金の金額は雇用単位が提供した研修費用を上 回ってはならない。雇用単位が労働者に支払いを要求する違約金は、サービス期間の未履行部分に割り当てられるべき研修費用を上回ってはならない。 「違約金」と「賠償金」の概念を混同
第23条第2項
(秘密保持義務と競業制限)
秘密保持義務を負う労働者に対して、雇用単位は労働契約又は秘密保持協議の中で労働者と競業制限条項を約定することができ、かつ労働契約解除又は終了後、 競業制限期限内に月ごとに労働者に経済補償を支給する事を約定することができる。労働者が競業制限の約定に違反した場合、約定に照らして雇用単位に違約金 を支払わなければならない。 第25条の規定との整合性
第38条第1項第5号
(労働者による労働契約の解除)
雇用単位が以下の状況の一つに該当する場合、労働者は労働契約を解除することができる。…(五)本法26条第1項が規定する事情によって、労働契約が無効となる場合。 労働者あるいは雇用単位は労働契約の無効により労働契約を解除できるとする点。(一般的に契約が無効であれば「解除」という説がないとされる)
第39条第5号
(雇用単位による一方的な労働契約の解除)
本法第26条第1項第1号が規定する事情によって労働契約が無効となる場合。 同上
第47条第2項
(経済補償の計算)
労働者の月給が雇用単位所在の直轄市、区を設けている市級人民政府が公布する本地区の前年度従業員平均月給の3倍を上回る場合、その支払われる経済補償の基準は従業員平均月給の3倍の金額で支給され、その支払われる経済補償の年限は最高で12年を超えないものとする。 「上限」に封じられる場合とそうでない場合とで経済補償金額の逆転が生ずることからくる不公平感。
第66条
(労務派遣が適用される職場)
労務派遣は一般的に臨時的、補助的又は代替的な業務職種に対し実施する。 労務派遣における「補助性、代替性及び臨時性」という3つの原則をめぐる論議。(※)
第92条
(労務派遣企業の法律責任)
労務派遣企業が本法の規定に違反した場合、労働行政部門とその他の関係主管部門は是正を命じる。情状が重大である場合は、1人あたり1,000元以上 5,000元以下の基準で罰金を科し、併せて工商行政管理部門は営業許可証を取り上げる。派遣労働者に損害を与えた場合、労務派遣企業と派遣先企業は連帯 して賠償責任を負う。 労務派遣機関と派遣先企業が被派遣労働者に対する連帯賠償責任について、「派遣先企業が法に違反した」ことを前提にしていない場合、派遣先企業が「連帯して賠償責任を負う」と規定すれば、唐突なものとみなされる点。
第97条第3項
(経過規定)
本法施行の日に存続している労働契約が本法施行後に解除又は終了する場合、本法第46条の規定に基づいて経済補償を支払わなければならないものについて は、経済補償の年限は本法施行の日から計算する。本法施行前に当時の関連規定に基づいて雇用単位が労働者に経済補償を支払わなければならない場合、当時の 関連規定に基づいて行う。 更なる解釈の必要性あり。


前回までの「特別寄稿:法律講座 再説」
特別寄稿:法律講座 再説「労働契約法」の論点(1) 無固定期間労働契約の締結条件についての小考察
情報提供: Whenever CHINA 08年3月号
2008/03/14 更新
筆者:斎斌 弁護士
潤明法律事務所 上海支所パートナー
1999年に弁護士登録。現在、潤明法律事務所の執行パートナーを務める。企業経営や企業法務の面で豊富な経験を背景に、多くの日系多国籍企業の対中投資計画に参与、ビジネスモデルの設計及び外商投資企業 (投資性企業も含む)の設立から清算までの各分野の法律業務に携わる。

潤明法律事務所
[URL] http://www.runminglaw.com
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