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独占禁止法についての解説(1)
07年8月30日に開催された第10回全国人民代表大会常務委員会第29次会議により「中華人民共和国独占禁止法」(独占禁止法)が採択され、来年8月1日に正式に施行されます。外国投資者を含む多くの経営者にとって本法は重大な意味を持つものであり、以下、その主な内容を解説していきます。

1.執行機構の二元化(独占禁止委員会と既存の法的執行機構)
「独占禁止法」第9条により国務院は新たに「独占禁止委員会」を設立します。ただし、当該委員会の権限は限られており、米国連邦貿易委員会や日本の公正取引委員会と全く異なり、主に組織協調と実施案内制定の役割を果たすものとなっています。独占禁止に関する法的執行機構は独占禁止法においては、「国務院独占禁止執行機構」と称し、具体的な機構は明確にされていません。
現状では、以下の3つの機構がその責任を果たしています。(1)発展改革委員会― 独占協議に関するものを担当(2)工商総局―支配地位濫用及び市場集中に関するものを担当(3)商務部―市場集中に関するものを担当。また、「独占禁止法」第10条の規定によれば、「国務院独占禁止法的執行機構」は公務状況によって、省、自治区、直轄市人民政府の当該機構に授権し、本法に基づき独占禁止に関する法的執行をさせることができます。
今後、新たに「独占禁止委員会」を設立しても、当該委員会の権限は限定され、一方で、主な法的執行機構も統一されていないことから、実務上の多くの場合、独占協議、市場集中、支配地位濫用の所轄部署が入り乱れ、各機構を統一しない限り、行政が重複してお互い水掛け論をするような事態も懸念されます。

2.「独占禁止法」における外国資金による国内企業買収に関する規定
「独占禁止法」第31条により、外国資金による国内企業買収もしくは他の方式で経営に参入の上、国家の経済安全に影響を及ぼす場合は、当該経営者の集中的審査を行い、また、国家の関係規定により、国家安全の審査も行うことになります。本条項の立法的背景としては、最近、数年において、外国資本による国内企業買収のケースが急増、特定の地域もしくは業界で外国資本の独占現象が生じたり、外国企業数が90%以上を占めるような状況が現出していることがあります。

こうした状況に対し、中国政府は外国資本による国内企業買収に関する法律規定を発布しました(例えば、06 年9月に実施した「外国投資者国内企業買取の暫定規定」など)。「独占禁止法」第12条により、外国投資者は国内企業を買収し、かつ過半数以上の持分を獲得し、重要な業界に影響を及ぼし、国家経済安全に影響を与え若しくは影響を与える可能性がある、または名声のある商標もしくは中華老商号を有する国内企業の支配権の移転をもたらす場合は、商務部に申告する必要があります。
また、「独占禁止法」によれば、中国国内企業を買収する外国投資者に対し、経営者の集中審査を行うことを規定し、国家の経済安全に影響を及ぼす場合はさらに国家安全審査を行うことになります。同趣旨の取り扱いは以前の規定にもあり、今回、立法化により、外国資本による国内企業買収の行為をより一層規範化したものと考えられます。その意味で、中国政府の外資利用政策に大きな変化が起きたとは考えられません。
なお、現在、「独占禁止法」では、国内企業買収審査についての内容は明確にされていませんが、筆者としては、(1)関連市場(“製品市場”と“地域市場”)への影響、(2)市場集中度への影響、(3)市場における優勢的地位に立つか否か(市場占有率、資金力、市場価格決定力などにより判断すべきと考えられます)、(4)買収に関する評価(当該買収は市場優勢的地位をどの程度強化するか、ライバル企業にどの程度の損害もしくは打撃を与えるか)などを勘案すべきものと考えます。
情報提供: BiZpresso Vol.36 1月1日発行
2008/01/03 更新
裘索 氏
プロフィール…上海市出身。法学博士、上海浦東新区人民代
表、内務司委員、政法領域執法監督員、検察庁廉潔監督員、上海錦天城法律事務所・シニアパートナー、日本国外国法事務弁護士、華東政法大学客員教授、華東師範大学特聘教授。上海ベストテン女性弁護士にも選出。1988年に司法役人を辞め、弁護士に登録。1998年に日本法務大臣から日本国外弁資格を取得。主要業務は、FID(外資直接投資)、M&A(合併&買収)、仲裁・訴訟、企業融資など企業法務。著書は「日本国弁護士制度」「日本国検察制度」「中国会社法」など。仕事言語は中国語、日本語、英語。


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