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《労働契約法》が企業の会計と税務にどのような影響をもたらすか、今号では、経済補償金を会計上、または企業所得税上においてどのように扱うべきか、筆者の見解を述べさせて頂きます。
3.会計上の処理
(1)経済補償金の会計処理
経済補償金は、各企業にとって何らかの影響をおよぼすものであるといわれています。将来の支出に備えて、毎期一定の基準に基づき計算した金額を引き当て計上したいと考えている企業も多くあるかと思います。
ここでは、日本でかつて広く使用されていた退職給与引当金のような形で引き当て計上できるか否かについて検討したいと思います。
(2)見積負債とは
中国の会計制度においては、負債性引当金に相当する科目として見積負債 (中国語で「預計負債」 )というものがあります。
ここで、負債性引当金とは、将来の支出に備えるための引当金を意味し、退職給与引当金、製品保証損失引当金等がこれに該当します。
(3)見積負債を計上するケース
見積負債は、上述の通り、将来の支出に備えてあらかじめ負債として引き当て計上するものでありますが、将来の支出に備えるために無条件で計上できるものではありません。
見積負債を計上するためには、以下の用件をすべて満たす必要があります。
<1>将来の支出の原因が当期以前の事由に起因する、企業が履行すべき不可避の義務であること。
<2>その義務の履行が企業に経済的利益の流出をもたらし、その発生の可能性が50%を超えること。
<3>その金額を合理的に見積もることが可能なこと。
(4)経済補償金と日本の退職金との差異
日本の退職金と新法の経済補償金は根本的に性格が異なります。日本の退職金は、各企業が制定した規定に基づき支給するものであり、通常は、自己都合の退職であっても退職金は支給されます。
一方、新法の経済補償金は、日本でいう自己都合による退職の場合、原則として支給する必要はありません。企業が労働契約で約定した条件と同等以上で契約を継続しようとしているにもかかわらず、従業員がこれに同意せず退職した場合には経済補償金を支払う必要はありません。給与が10%近くの率で上昇する中、例えば契約更新の際に給与を据え置き、またはわずかな増額とし、従業員がそれに不満を抱いて退職する場合には、経済補償金の支払の必要はないことになります。
実例ではほとんどないものの、定年まで勤務した場合の退職についても、日本の退職金とは異なり、規定上は経済補償金の支払い義務はありません。日本と比較して、多額の支払義務が発生するというケースは、それほど多くはないのではと考えます。
(5)見積負債計上の可能性
次に、新法で規定する経済補償金が会計上の見積負債の計上要件を満たしているか、つまり(3)の条件を満たしているかについて検討したいと思います。
<1>2007年度末における計上の可否
労働契約不更新の場合に支給する経済補償金の計算は、施行日以前の期間を計算対象としないこととなっているため、今年度末においては、引き当て計上は難しいと考えます。
<2>2008年度以降の計上の可否
見積負債として計上するための要件として問題になると思われるのは、発生の可能性が高いといえるか否かと、将来発生する経済補償金の金額を合理的に見積もることができるか否かであります。見積負債は、発生の可能性が高くてもその金額を合理的に見積もることができない場合や、金額を合理的に見積もることができても発生の可能性が高くない場合には計上することはできません。
多数の従業員を抱える生産型企業においては、少なからず、企業の意思に基づく契約不更新による経済補償金の支払は発生するものと思われます。ただし、定年退職者には経済補償金の支払い義務はなく、かつ、企業側も例えば初回の契約期間3年とし試用期間を最長の6カ月とし、従業員の適正・能力を見極める時間を長くすることで契約不更新による経済補償金の支払いを回避する等の対策をとることが考えられます。
このことから考えて、発生の可能性のある経済補償金の金額を合理的に算定することには相当程度の困難を伴うことが考えられ、監査の際に会計士より、見積負債計上の要件を満たしていないとの指摘を受ける可能性があると考えます。
(1)経済補償金の会計処理
経済補償金は、各企業にとって何らかの影響をおよぼすものであるといわれています。将来の支出に備えて、毎期一定の基準に基づき計算した金額を引き当て計上したいと考えている企業も多くあるかと思います。
ここでは、日本でかつて広く使用されていた退職給与引当金のような形で引き当て計上できるか否かについて検討したいと思います。
(2)見積負債とは
中国の会計制度においては、負債性引当金に相当する科目として見積負債 (中国語で「預計負債」 )というものがあります。
ここで、負債性引当金とは、将来の支出に備えるための引当金を意味し、退職給与引当金、製品保証損失引当金等がこれに該当します。
(3)見積負債を計上するケース
見積負債は、上述の通り、将来の支出に備えてあらかじめ負債として引き当て計上するものでありますが、将来の支出に備えるために無条件で計上できるものではありません。
見積負債を計上するためには、以下の用件をすべて満たす必要があります。
<1>将来の支出の原因が当期以前の事由に起因する、企業が履行すべき不可避の義務であること。
<2>その義務の履行が企業に経済的利益の流出をもたらし、その発生の可能性が50%を超えること。
<3>その金額を合理的に見積もることが可能なこと。
(4)経済補償金と日本の退職金との差異
日本の退職金と新法の経済補償金は根本的に性格が異なります。日本の退職金は、各企業が制定した規定に基づき支給するものであり、通常は、自己都合の退職であっても退職金は支給されます。
一方、新法の経済補償金は、日本でいう自己都合による退職の場合、原則として支給する必要はありません。企業が労働契約で約定した条件と同等以上で契約を継続しようとしているにもかかわらず、従業員がこれに同意せず退職した場合には経済補償金を支払う必要はありません。給与が10%近くの率で上昇する中、例えば契約更新の際に給与を据え置き、またはわずかな増額とし、従業員がそれに不満を抱いて退職する場合には、経済補償金の支払の必要はないことになります。
実例ではほとんどないものの、定年まで勤務した場合の退職についても、日本の退職金とは異なり、規定上は経済補償金の支払い義務はありません。日本と比較して、多額の支払義務が発生するというケースは、それほど多くはないのではと考えます。
(5)見積負債計上の可能性
次に、新法で規定する経済補償金が会計上の見積負債の計上要件を満たしているか、つまり(3)の条件を満たしているかについて検討したいと思います。
<1>2007年度末における計上の可否
労働契約不更新の場合に支給する経済補償金の計算は、施行日以前の期間を計算対象としないこととなっているため、今年度末においては、引き当て計上は難しいと考えます。
<2>2008年度以降の計上の可否
見積負債として計上するための要件として問題になると思われるのは、発生の可能性が高いといえるか否かと、将来発生する経済補償金の金額を合理的に見積もることができるか否かであります。見積負債は、発生の可能性が高くてもその金額を合理的に見積もることができない場合や、金額を合理的に見積もることができても発生の可能性が高くない場合には計上することはできません。
多数の従業員を抱える生産型企業においては、少なからず、企業の意思に基づく契約不更新による経済補償金の支払は発生するものと思われます。ただし、定年退職者には経済補償金の支払い義務はなく、かつ、企業側も例えば初回の契約期間3年とし試用期間を最長の6カ月とし、従業員の適正・能力を見極める時間を長くすることで契約不更新による経済補償金の支払いを回避する等の対策をとることが考えられます。
このことから考えて、発生の可能性のある経済補償金の金額を合理的に算定することには相当程度の困難を伴うことが考えられ、監査の際に会計士より、見積負債計上の要件を満たしていないとの指摘を受ける可能性があると考えます。
4.企業所得税上の取扱い
仮に見積負債として引き当て計上をした場合にも、確定債務ではないため、税務上の損金としては認められず、申告計算上、加算調整する必要があると思われます。
来年から施行される新《企業所得税》については、現時点で実施細則等が公布されておらず変更の可能性も考えられますが、従業員の意思による契約の不更新については経済補償金を支払う必要がなく、また、このようなケースによる退職も相当な比率であると思われることから、引き当て時における税務上の損金性を認めないと考えます。
従いまして、会計上の引き当て計上の有無に関わらず、税務上は、経済補償金の実際の支給時に損金として計上することになると考えます。
5.おわりに
新法において、会計上の見積負債を計上することは相当程度の困難を伴うと考えます。ただし、企業側は、無固定期限労働契約への移行等を踏まえ、独自の退職金規定の制定や企業年金制度の導入等の動きに出るものと考えられます。
前回までの「会計講座」
会計講座 第7回:新《労働契約法》における経済補償金の会計と税務(1)
会計講座 第6回:遡及期間、罰金、延滞税と告発の奨励について
仮に見積負債として引き当て計上をした場合にも、確定債務ではないため、税務上の損金としては認められず、申告計算上、加算調整する必要があると思われます。
来年から施行される新《企業所得税》については、現時点で実施細則等が公布されておらず変更の可能性も考えられますが、従業員の意思による契約の不更新については経済補償金を支払う必要がなく、また、このようなケースによる退職も相当な比率であると思われることから、引き当て時における税務上の損金性を認めないと考えます。
従いまして、会計上の引き当て計上の有無に関わらず、税務上は、経済補償金の実際の支給時に損金として計上することになると考えます。
5.おわりに
新法において、会計上の見積負債を計上することは相当程度の困難を伴うと考えます。ただし、企業側は、無固定期限労働契約への移行等を踏まえ、独自の退職金規定の制定や企業年金制度の導入等の動きに出るものと考えられます。
前回までの「会計講座」
会計講座 第7回:新《労働契約法》における経済補償金の会計と税務(1)
会計講座 第6回:遡及期間、罰金、延滞税と告発の奨励について
情報提供:
Whenever CHINA 07年11月号
Whenever CHINA 07年11月号2007/11/07 更新
筆者:川嶋広行
望月コンサルティング(上海)有限公司 パートナー 公認会計士
望月コンサルティング(上海)有限公司 公認会計士 望月一央事務所
[住所] 上海市浦東新区張楊路560号 中融恒瑞国際大厦西棟1702室
[電話] 021-5835-9960 / [FAX] 021-5835-9964
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望月コンサルティング(上海)有限公司 パートナー 公認会計士
日本公認会計士。1990年2次試験に合格。92年大学を卒業後、同年より日本の大手監査法人にて法定監査、IPO支援業務に従事する。2000年同法人を退職後、北京での1 年間の語学留学を経て E&Y上海事務所にて日系企業の監査、税務アドバイザリー業務に従事し、06年より望月コンサルティングに参画する。現在、業務改善支援や財務デューディリジェンス業務等を手がけている。
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