コンサルティング 中国
現在、審議が進む「中華人民共和国独占禁止法(反壟断法)草案」が注目を浴びる背景には、多数の国有企業を買収することで市場では独占が台頭、各界で広く議論が巻き起こっていることと無縁ではない。また「知財」所有者が限度を越えた権利行使に出ることなどの問題も想定される。今号では、「独占禁止法」施行後、外資企業にもたらされるだろう影響、そして外資企業が留意すべき点について概説する。
(二)「独占禁止法」が外資企業にもたらす影響
1.「訴訟」増加を憂う外資企業
中国は現行法(反不正当競争法、価格法、入札法、対外貿易法など)の中で独占行為の禁止を謳い、不法独占行為の抑制、自由公平競争を保護するうえで一定の積極的役割を果たしている。しかし「独占禁止法」が存在しないため、典型的な独占行為を有効に規制する十分な法的根拠を示すことができないでいる。
それゆえ、市場で優勢を占める多国籍企業の多くが、年末にも独占禁止法が成立すれば、中国企業はただちに訴訟攻撃を仕掛けてくるだろうという認識で一致している。弁護士事務所側も同様、独占禁止法が争点となる訴訟が今後増加すると見ている。
独占禁止法による告発に憂慮を見せる多国籍企業は多い。マイクロソフト、コダック、バスフ、インテル、ソニー、ゼネラルエレクトリック(GE)などの巨大多国籍企業は、昨年から独占禁止法関連の各種シンポジウムに積極的に参加し、また会合やメディアなどの手段を通じて自身の立場を明らかにし始めている。中には、人脈ルートを使って政府の姿勢に影響を及ぼす努力さえしている企業もある。
1.「訴訟」増加を憂う外資企業
中国は現行法(反不正当競争法、価格法、入札法、対外貿易法など)の中で独占行為の禁止を謳い、不法独占行為の抑制、自由公平競争を保護するうえで一定の積極的役割を果たしている。しかし「独占禁止法」が存在しないため、典型的な独占行為を有効に規制する十分な法的根拠を示すことができないでいる。
それゆえ、市場で優勢を占める多国籍企業の多くが、年末にも独占禁止法が成立すれば、中国企業はただちに訴訟攻撃を仕掛けてくるだろうという認識で一致している。弁護士事務所側も同様、独占禁止法が争点となる訴訟が今後増加すると見ている。
独占禁止法による告発に憂慮を見せる多国籍企業は多い。マイクロソフト、コダック、バスフ、インテル、ソニー、ゼネラルエレクトリック(GE)などの巨大多国籍企業は、昨年から独占禁止法関連の各種シンポジウムに積極的に参加し、また会合やメディアなどの手段を通じて自身の立場を明らかにし始めている。中には、人脈ルートを使って政府の姿勢に影響を及ぼす努力さえしている企業もある。
2.「独占禁止法」の実施で外資企業が留意すべき点
草案が規定する「経営者の独占協議」の禁止、「経営者が市場の支配的地位を乱用する行為」の禁止についてここで見ておきたい。
(1)企業合併により市場競争を制限してはならない
ここ数年、外資が多数の国有企業を買収し、その結果、市場では独占が台頭し、社会各界で広く議論が巻き起こっている。
大規模な企業の合併は、直接市場占有率の集中をもたらし、業界の競争と刷新の原動力を低下させる。このため、企業合併は「独占禁止法」の中で重要関心事項ともなっている。
草案では、企業の合併活動に厳格な基準を設け、合併する企業同士の世界売上規模が年間120億元以上、また個別企業では中国での売上規模が年間8億元以上の合併について、事前審査が課せられることを定めている。
しかし、一方で、合併は企業の発展とスケール経済を実現する重要な手段である。特に、大規模再編と集中は中国国有企業改革における重要な戦略ともなっているほか、勢いを増す民営企業にとってもまた、合併を通じた拡大実現の必要に迫られている。
こうした事情を踏まえ、国外の経験を参考に、草案では一定規模以上の合併については免税措置を与えている。実際に合併を実行する段階で、ある部分は競争制限に抵触するものの、全体的に見て技術進歩に役立ち、経済発展と社会公共利益に役立つ合意であれば、審査を経て免税措置が与えられる。
ひとつの方法はいわゆる資産の切り離しである。企業合併後、独占的地位を占める経営分野の資産の一部を譲渡したり、独立した企業を設立するなどしたりして、企業自身の優位性を薄めることにより独占禁止機関の承認を得る手法である。「二つの看板で一つの経営陣」という事態を回避するため、各国の独占禁止法は、「完全な資本分割」を行なうよう特に強調している。すなわち、切り離される資産が事実上、切り離す前の企業の支配もしくは影響を受けず、併せて真の競争関係となるよう求めている。もう一つは「効率性の抗弁」と呼ばれるものである。合併が大幅に生産効率とサービスの質を高め、十分な経済・社会的利益をもたらし、競争の減少による損失を埋め合わせるものと見なされる場合、合併は例外的に認められる。
(2)知的財産権を乱用してはならない
知的財産権の特殊な性質から、各国はともに権利者の知的財産権に対する排他的権利を認めているが、これは合法的な独占ということができる。ただし、権利者の行為が限界を越えた場合、「独占禁止法」は「経営者が知的財産権の法律、行政法規の規定を逸脱し、排除、競争制限を行なった場合、本法を適用できる」と規定し、制限を加えている。
中でも真っ先に規制されるべきものに特許カルテルがある。業界で先導的地位を占める企業同士が組んで、各自の特許技術を特許使用者に抱き合わせ販売し、一括して代金を受け取る行為である。「独占禁止法」草案の関連規定によると、特許の共同経営組織が勝手に特許使用料を引き上げ、必要でない特許までも抱き合わせ販売することは、実質的に支配的地位の乱用、競争を制限する共同行為に当たり、独占行為を構成し得ると規定している。
これとは別に、センシティブな問題として私的所有の基準がある。すなわち、業界の中で先行する企業が、製品の中に自らが作成した秘密の、他を受け入れない技術基準を大量に使用し、それによって後発の競争相手の製品をユーザーに使用させない行為である。典型的な例を示すと、私的所有の特殊ソースコードを利用したマイクロソフトのウィンドウズOS(オペレーションシステム)は競争相手のソフトをサポートすることができない。称して「IT時代の寡占モデル」と呼ばれる。これも、米政府が独占を告発する有力な証拠となり、MSに二つの会社に分割するよう命令が下った。「独占禁止法」草案の立法の原則の下では、私的所有の基準を利用して市場障壁を設けることは、支配的地位を乱用した独占行為となる。
草案が規定する「経営者の独占協議」の禁止、「経営者が市場の支配的地位を乱用する行為」の禁止についてここで見ておきたい。
(1)企業合併により市場競争を制限してはならない
ここ数年、外資が多数の国有企業を買収し、その結果、市場では独占が台頭し、社会各界で広く議論が巻き起こっている。
大規模な企業の合併は、直接市場占有率の集中をもたらし、業界の競争と刷新の原動力を低下させる。このため、企業合併は「独占禁止法」の中で重要関心事項ともなっている。
草案では、企業の合併活動に厳格な基準を設け、合併する企業同士の世界売上規模が年間120億元以上、また個別企業では中国での売上規模が年間8億元以上の合併について、事前審査が課せられることを定めている。
しかし、一方で、合併は企業の発展とスケール経済を実現する重要な手段である。特に、大規模再編と集中は中国国有企業改革における重要な戦略ともなっているほか、勢いを増す民営企業にとってもまた、合併を通じた拡大実現の必要に迫られている。
こうした事情を踏まえ、国外の経験を参考に、草案では一定規模以上の合併については免税措置を与えている。実際に合併を実行する段階で、ある部分は競争制限に抵触するものの、全体的に見て技術進歩に役立ち、経済発展と社会公共利益に役立つ合意であれば、審査を経て免税措置が与えられる。
ひとつの方法はいわゆる資産の切り離しである。企業合併後、独占的地位を占める経営分野の資産の一部を譲渡したり、独立した企業を設立するなどしたりして、企業自身の優位性を薄めることにより独占禁止機関の承認を得る手法である。「二つの看板で一つの経営陣」という事態を回避するため、各国の独占禁止法は、「完全な資本分割」を行なうよう特に強調している。すなわち、切り離される資産が事実上、切り離す前の企業の支配もしくは影響を受けず、併せて真の競争関係となるよう求めている。もう一つは「効率性の抗弁」と呼ばれるものである。合併が大幅に生産効率とサービスの質を高め、十分な経済・社会的利益をもたらし、競争の減少による損失を埋め合わせるものと見なされる場合、合併は例外的に認められる。
(2)知的財産権を乱用してはならない
知的財産権の特殊な性質から、各国はともに権利者の知的財産権に対する排他的権利を認めているが、これは合法的な独占ということができる。ただし、権利者の行為が限界を越えた場合、「独占禁止法」は「経営者が知的財産権の法律、行政法規の規定を逸脱し、排除、競争制限を行なった場合、本法を適用できる」と規定し、制限を加えている。
中でも真っ先に規制されるべきものに特許カルテルがある。業界で先導的地位を占める企業同士が組んで、各自の特許技術を特許使用者に抱き合わせ販売し、一括して代金を受け取る行為である。「独占禁止法」草案の関連規定によると、特許の共同経営組織が勝手に特許使用料を引き上げ、必要でない特許までも抱き合わせ販売することは、実質的に支配的地位の乱用、競争を制限する共同行為に当たり、独占行為を構成し得ると規定している。
これとは別に、センシティブな問題として私的所有の基準がある。すなわち、業界の中で先行する企業が、製品の中に自らが作成した秘密の、他を受け入れない技術基準を大量に使用し、それによって後発の競争相手の製品をユーザーに使用させない行為である。典型的な例を示すと、私的所有の特殊ソースコードを利用したマイクロソフトのウィンドウズOS(オペレーションシステム)は競争相手のソフトをサポートすることができない。称して「IT時代の寡占モデル」と呼ばれる。これも、米政府が独占を告発する有力な証拠となり、MSに二つの会社に分割するよう命令が下った。「独占禁止法」草案の立法の原則の下では、私的所有の基準を利用して市場障壁を設けることは、支配的地位を乱用した独占行為となる。
情報提供:
Whenever CHINA 07年9月号
Whenever CHINA 07年9月号2007/09/19 更新
筆者:倪 民
上海兆辰匯亜律師事務所弁護士・執行パートナー
上海兆辰匯亜律師事務所弁護士・執行パートナー
プロフィール…1983年中国復旦大学法律学部卒業後、85年弁護士資格取得。その後、神奈川大学院法律学部留学を経て現職。外商投資、会社法、M&A、労働法など幅広い分野で日系企業の案件に関わる
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