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新・移転価格税の国際理論 第1回:移転価格税の基礎を現場の視点から解説
事前確認で課税回避 現状を見据え申請の判断を
新連載第1回目の今回は、移転価格税制の事前確認制度(APA)に関する日中両国の取り扱いについて説明する。

APAの概要
APAを簡単に説明すると、関連会社間の取り引きにおける価格決定などの一定基準を税務当局と取り決めし、それに従って取り引きをすることだ。この申請は一方の国と確認するケース、双方の国と確認するケース、あるいは2カ国以上の国と確認するケースがある。

納税者が2カ国以上に申請した場合、両国の税務当局が協議を行い、申請内容について調整を行う。申請が認められた場合、移転価格税の税務リスクを回避することが可能となる。各国の税務当局はこの制度を推進している。

APAの問題点
だが、APAの利用は現実的には少ないと思われる。特にこの税制の経験が少ない企業には相当にハードルが高い。その理由は次の通り。

(1)当局が納税者に要求する資料はあまりにも専門性が高く、作成に相当の手間とコストが必要なこと。資料にはグループ全体の取引実態、利益配分の実績と予測、利益の発生要因の解明資料、取引製品のマーケット分析、生産計画と稼働実績によるコスト分析、グループ経営の主体と個別事情などがあり、これを基に税務当局が判断する。資料の作成には移転価格税の専門知識が必要で、通常は追加資料も膨大となる。

(2)納税者側がグループ会社全体の経営や内部取引の実態などの資料を税務当局に明らかにすることに躊躇すること。ただし、APA申請のために提出した資料は一般の税務調査には利用しないとする国際ルールがあり、日本でもこれを守ることを明言している。

(3)事前確認の申請から結果が得られるまでに長い期間を要すること。通常は6カ月から1年以上に及ぶ。さらに2カ国以上に申請した場合、その倍近い期間がかかるものと見られる。ビジネスサイクルの急速化がグローバルなスケールで進行する時代に、税制がついて行けないとの指摘もある。

APA選択のポイント
APAを利用できる企業は実際には限られている。業種、取引形態、関連会社の機能など、取り引きする海外の関連会社も含めて総合的に判断する。しかし、APAの選択が適当であると判断できれば絶対に選択すべきである。事後に発生する移転価格税の税リスクは余りにも大きく、国際的な企業経営の根底を揺るがす事態を招くこともある。

中国に進出した日本企業に限れば、グループ経営の実態を把握し、APAを日本ですべきか、中国ですべきか、あるいは双方ですべきかを判断する。いずれか一方の国のみで充分となれば、手間とコストは大幅に軽減される。最近、注目されている無形資産の供与に対するロイヤリティー課税については、ケースによってこれ以外に2重課税を回避する方策がない。

APAの今後
移転価格税は国際課税であり、国際相互間の税ルールに整合性がなければ、納税者は同一の所得に対して2重課税を受けることになる。しかし、企業は所得を蓄積し、この財源を将来に向けての投資に充当して、急速に変化するマーケットニーズに対応する。

しかし、将来への糧となる利益に対する2重課税はあまりにも大きなハンデとなる。結果、長期的には企業活動の国際活動に対する税障害となり、グローバル化を目指す企業を萎縮させ、その国の企業の国際競争力を失わせることになる。

移転価格税の課税趣旨は理解するにしても、納税者にとって予測性と透明性が確保できる税制を確立すべきだ。そのためにも多くの企業がAPAを申請し、これを受けて両国の税当局がその判断と合意内容を公開することで、透明性ある課税制度の確立を図ることが望まれている。
情報提供: BiZpresso Vol.53 9月16日発行
2008/09/23 更新
出津平 氏 JCTP(米国TMA 事業再生士)・ 税理士(国際税務専門)

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