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分析
1.「無固定期間」≠「無期限」
無固定期間労働契約とは、労働契約の期間を明確に定めていない契約であり、無期限契約ではない。一定の事由が生じた場合、無固定期間労働契約は解除することができる。「会社の規則制度への重大な違反」とは、その事由の1つだ。本事案では、C公司(以下、会社)がこれを事由とし、無固定期間労働契約を解除した。根拠となるものは、会社の『就業規則』第18条、「上長の合理的な業務指示に故意に従わず、無断に職場を離脱し、又は経常的に欠席するとき」だった。
2.業務内容の合理性と従業員側の拒否権
上長から指示された業務内容の合理性や公平性はどうなのか?これを理由に部下が業務の遂行を拒否できるのか?従業員の職位や能力のレベルを著しく超過した業務を指示した場合、合理性や公平性の問題になるが、逆に上級従業員に初歩的な業務をやらせた場合は?本事案は、後者であるかのように見える。月給3万元以上の張さんはかなりの高給取り、上級管理職であることは明白だ。しかし、会社は、彼女にデータ入力業務を割り当てた。業務配分の戦略的意図はさておき、上級者に初級的業務をやらせてはならないという理論は到底成立しないだろうし、難易度についても物理的に判断不能だ。すると、初級的業務を拒否する上級管理職の規則制度違反は明白だ。
3.重大違反の立証
違反が明らかでも、その重大性の立証が求められる(労働契約法第39条第(2)項による)。張さんの致命傷は、データ入力のミスでなく、データ入力業務の拒否にあった。張さんから上長及び同僚に発せられた「データ入力業務停止通知」は、業務遂行拒否の故意性を裏付けるエビデンスになる。会社はさらに業務改善命令の文書を出し、エビデンス・チェーン(整合された証拠の系列)の整備を着々と進めていた。しかし、張さんの拒否行為は、果たして「重大違反」に相当するのか?疑問が持たれる。
1.「無固定期間」≠「無期限」
無固定期間労働契約とは、労働契約の期間を明確に定めていない契約であり、無期限契約ではない。一定の事由が生じた場合、無固定期間労働契約は解除することができる。「会社の規則制度への重大な違反」とは、その事由の1つだ。本事案では、C公司(以下、会社)がこれを事由とし、無固定期間労働契約を解除した。根拠となるものは、会社の『就業規則』第18条、「上長の合理的な業務指示に故意に従わず、無断に職場を離脱し、又は経常的に欠席するとき」だった。
2.業務内容の合理性と従業員側の拒否権
上長から指示された業務内容の合理性や公平性はどうなのか?これを理由に部下が業務の遂行を拒否できるのか?従業員の職位や能力のレベルを著しく超過した業務を指示した場合、合理性や公平性の問題になるが、逆に上級従業員に初歩的な業務をやらせた場合は?本事案は、後者であるかのように見える。月給3万元以上の張さんはかなりの高給取り、上級管理職であることは明白だ。しかし、会社は、彼女にデータ入力業務を割り当てた。業務配分の戦略的意図はさておき、上級者に初級的業務をやらせてはならないという理論は到底成立しないだろうし、難易度についても物理的に判断不能だ。すると、初級的業務を拒否する上級管理職の規則制度違反は明白だ。
3.重大違反の立証
違反が明らかでも、その重大性の立証が求められる(労働契約法第39条第(2)項による)。張さんの致命傷は、データ入力のミスでなく、データ入力業務の拒否にあった。張さんから上長及び同僚に発せられた「データ入力業務停止通知」は、業務遂行拒否の故意性を裏付けるエビデンスになる。会社はさらに業務改善命令の文書を出し、エビデンス・チェーン(整合された証拠の系列)の整備を着々と進めていた。しかし、張さんの拒否行為は、果たして「重大違反」に相当するのか?疑問が持たれる。
4.逆方向推理の驚くべき結果
逆方向に推理すると、疑問がさらに膨らむ。「上級者に初級の業務をやらせる」よりも、そもそも「初級かせいぜい中級業務しかやっていない(しかできない?)人間」を当初の判断ミスで「上級管理職」に祭り上げていなかっただろうか? ⇒身分不相応の天文学的数字の給与を出してしまった? ⇒気がついたら市中の一般賃金相場から大きく乖離(かいり)していることが分かった? ⇒処理方法は? ⇒減俸が難しければ解雇するしかない? ⇒解雇事由は? ⇒…これで徐々に現状の事実に1歩、2歩へと接近する。
5.「4万元:40万元:400万元」の経済学的な試算
現在39歳の張さんの年俸は40万元。定年まで雇用していると、残存期間の給与総額は16年で640万元、保険などを加算すれば800万元超。もし、人材市場相場の50%過剰評価で考えると、今後の16年に会社は400万元以上の損失を出すことになる。弁護士を動員して解雇した場合のコスト概算は?弁護士費用15万元、訴訟費用3万元、補償金など18万元、証拠収集・整備などコストを入れて合計40万元程度になる。ざっと1:10の計算になる。さらに個別の過剰評価が社内賃金体系全体にも影響することを忘れるべきではない。波及効果を評価すれば、基数10にはとどまらない。いずれにせよ、会社の財務表に影響を及ぼすことはいうまでもない。
6.労働者に不利な判決
本事案は、労働者に不利な判決が出されている。「労働契約法は、鉄飯碗つまり親方日の丸ではない。無固定期間労働契約は、解除できるものだ」。最近、政府は労働者保護一辺倒から企業をなだめる姿勢へと変化を見せている。企業の不安が、雇用と社会の安定にマイナス影響を与えるからだ。本事案は、労働者権益重視という司法の一貫した姿勢からすれば異例の判決といえる。当事者が世界的に有名な大企業であるだけにインパクトも強い。「無固定期間契約でも解除できる」ことが実証されれば、これで外資企業がひとまず安心してよいものだろうか?答えは読者各自の判断に任せたい。
逆方向に推理すると、疑問がさらに膨らむ。「上級者に初級の業務をやらせる」よりも、そもそも「初級かせいぜい中級業務しかやっていない(しかできない?)人間」を当初の判断ミスで「上級管理職」に祭り上げていなかっただろうか? ⇒身分不相応の天文学的数字の給与を出してしまった? ⇒気がついたら市中の一般賃金相場から大きく乖離(かいり)していることが分かった? ⇒処理方法は? ⇒減俸が難しければ解雇するしかない? ⇒解雇事由は? ⇒…これで徐々に現状の事実に1歩、2歩へと接近する。
5.「4万元:40万元:400万元」の経済学的な試算
現在39歳の張さんの年俸は40万元。定年まで雇用していると、残存期間の給与総額は16年で640万元、保険などを加算すれば800万元超。もし、人材市場相場の50%過剰評価で考えると、今後の16年に会社は400万元以上の損失を出すことになる。弁護士を動員して解雇した場合のコスト概算は?弁護士費用15万元、訴訟費用3万元、補償金など18万元、証拠収集・整備などコストを入れて合計40万元程度になる。ざっと1:10の計算になる。さらに個別の過剰評価が社内賃金体系全体にも影響することを忘れるべきではない。波及効果を評価すれば、基数10にはとどまらない。いずれにせよ、会社の財務表に影響を及ぼすことはいうまでもない。
6.労働者に不利な判決
本事案は、労働者に不利な判決が出されている。「労働契約法は、鉄飯碗つまり親方日の丸ではない。無固定期間労働契約は、解除できるものだ」。最近、政府は労働者保護一辺倒から企業をなだめる姿勢へと変化を見せている。企業の不安が、雇用と社会の安定にマイナス影響を与えるからだ。本事案は、労働者権益重視という司法の一貫した姿勢からすれば異例の判決といえる。当事者が世界的に有名な大企業であるだけにインパクトも強い。「無固定期間契約でも解除できる」ことが実証されれば、これで外資企業がひとまず安心してよいものだろうか?答えは読者各自の判断に任せたい。
情報提供:
2008/09/12 更新
立花聡 氏
上海エリス・コンサルティング有限公司 総代表・首席コンサルタント
華東政法大学 法学博士研究生
復旦大学 法学修士
中欧国際工商学院 経営学修士(MBA)
上海エリス・コンサルティング有限公司 総代表・首席コンサルタント
華東政法大学 法学博士研究生
復旦大学 法学修士
中欧国際工商学院 経営学修士(MBA)
プロフィール…1964年生まれ、華僑系日本人。早稲田大学卒、トステム東京本社勤務を経て、英ロイター通信社に入社。94年から6年間、ロイター中国・東アジア日系市場統括マネージャーとして、上海と香港に駐在。00年ロイター退職後、エリス・コンサルティングを創設、代表兼首席コンサルタントを務め、現在に至る
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