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判例
J外資A公司が96年に陳さんを倉庫管理員として採用した。06年4月、A公司は一部工員の直接雇用を労務派遣へ切り替え、B労務派遣公司と労務派遣契約を締結した。派遣従業員の名簿には陳さんの名前もあった。A公司は、賃金の代理支払い、社会保険の代理納付業務をB公司へ外部委託したことを説明し、B公司との労働契約の締結を陳さんに求めた。それに応じなければ、労働契約の満期とともに打ち切ることを示唆した。陳さんは仕方なくB労務派遣公司と労働契約を交わした。
07年9月、陳さんが配送貨物にラベルを貼り忘れ、A公司は業務規程の違反とし陳さんを解雇した。陳さんは、納得せず労働契約解除補償金の支払いを求めるが、A公司は陳さんがすでに同社の従業員ではないことを理由に断った。陳さんは仲裁を申し立てるが、不受理とされたため、地方法院への提訴に踏み切った。判決は、会社の勝訴となった。
J外資A公司が96年に陳さんを倉庫管理員として採用した。06年4月、A公司は一部工員の直接雇用を労務派遣へ切り替え、B労務派遣公司と労務派遣契約を締結した。派遣従業員の名簿には陳さんの名前もあった。A公司は、賃金の代理支払い、社会保険の代理納付業務をB公司へ外部委託したことを説明し、B公司との労働契約の締結を陳さんに求めた。それに応じなければ、労働契約の満期とともに打ち切ることを示唆した。陳さんは仕方なくB労務派遣公司と労働契約を交わした。
07年9月、陳さんが配送貨物にラベルを貼り忘れ、A公司は業務規程の違反とし陳さんを解雇した。陳さんは、納得せず労働契約解除補償金の支払いを求めるが、A公司は陳さんがすでに同社の従業員ではないことを理由に断った。陳さんは仲裁を申し立てるが、不受理とされたため、地方法院への提訴に踏み切った。判決は、会社の勝訴となった。
分析
陳さんの主張:自分はA公司で11年も働いたが補償金がなく不公平だ。B公司との労働契約は、解雇を条件とし脅迫されて締結したものであり、無効だ。契約後実際にB公司に出勤したことが一度もない。A公司とB公司は代理サービス行為のみであり、派遣行為に該当しない。たとえ派遣行為が成立しても、A公司は過去陳さんを直接雇用した勤続年数に対し、経済補償を行うべきだ。
A公司の主張:陳さんがB公司と労働契約を結んで1年以上経過している。労務派遣サービス契約に基づき、A公司とB公司と陳さんの3者が労務派遣の三角関係を形成している。A公司は、陳さんをB公司に戻すことを通知し、B公司はそれに同意し、受け入れた。陳さんがB公司に戻された翌日、B公司との労働契約を解除されたため、A公司と何ら関係もない。
この紛争の焦点は、A公司と陳さんの関係は何か、それが労務派遣関係(非労働関係)であれば雇用主と使用者のどちらが労働者に対し義務を負うかにあった。
●陳さんは06年4月、労務派遣公司と労働契約を交わし、労働関係をA公司からB公司へと移した。B公司との労働契約書に署名した以上、陳さんはA公司との労働関係を自ら断った。労働関係がなければ経済補償金も請求できなくなる。陳さんとA公司、B公司の三角関係は以下の通りである。

●雇用主(労働契約締結者=B公司)と使用者(労務管理実施者=A公司)が異なる場合、労働者に対する義務を誰が負うのか?『上海市労働契約条例』第25条によると、A公司とB公司の2社によって約定することができ、A公司が完全もしくは一部の義務を負う。A公司が約定通りの義務を負うことのできないときは、B公司がその義務を負う。中国の労務派遣は、当事者間の法関係が非常に複雑である。労働関係の当事者同士のみが労働法令の調整対象とされながらも、非労働関係の使用者と派遣労働者の間にも労働関係あるいは準労働関係的な義務設定がなされている。
●陳さんは、「B公司との労働契約は、A公司に脅迫されて締結した」と主張するが、立証できるのか?「B公司と労働契約しなければ、A公司との労働契約を打ち切る」。A公司のセリフはまったく脅迫の成分がないとはいえないが、立証は難しい。
●B公司労働契約の締結と同時にあったA公司と陳さんとの労働契約の解除行為に違法性はあるのか?陳さんは、別途仲裁または訴訟を通じて権利を主張することになる。違法性の有無にかかわらず、B公司労働契約の有効性に影響しない。
このケースは、A公司の勝訴で終結した。判決は、陳さんとA公司の間に事実上の労働関係の存在を否定し、A公司の正当性を認め、陳さんが主張する「脅迫行為による労働契約の解除と締結」が本案の審理範疇に該当しないとし、陳さんの請求を退けた。
陳さんの主張:自分はA公司で11年も働いたが補償金がなく不公平だ。B公司との労働契約は、解雇を条件とし脅迫されて締結したものであり、無効だ。契約後実際にB公司に出勤したことが一度もない。A公司とB公司は代理サービス行為のみであり、派遣行為に該当しない。たとえ派遣行為が成立しても、A公司は過去陳さんを直接雇用した勤続年数に対し、経済補償を行うべきだ。
A公司の主張:陳さんがB公司と労働契約を結んで1年以上経過している。労務派遣サービス契約に基づき、A公司とB公司と陳さんの3者が労務派遣の三角関係を形成している。A公司は、陳さんをB公司に戻すことを通知し、B公司はそれに同意し、受け入れた。陳さんがB公司に戻された翌日、B公司との労働契約を解除されたため、A公司と何ら関係もない。
この紛争の焦点は、A公司と陳さんの関係は何か、それが労務派遣関係(非労働関係)であれば雇用主と使用者のどちらが労働者に対し義務を負うかにあった。
●陳さんは06年4月、労務派遣公司と労働契約を交わし、労働関係をA公司からB公司へと移した。B公司との労働契約書に署名した以上、陳さんはA公司との労働関係を自ら断った。労働関係がなければ経済補償金も請求できなくなる。陳さんとA公司、B公司の三角関係は以下の通りである。

●雇用主(労働契約締結者=B公司)と使用者(労務管理実施者=A公司)が異なる場合、労働者に対する義務を誰が負うのか?『上海市労働契約条例』第25条によると、A公司とB公司の2社によって約定することができ、A公司が完全もしくは一部の義務を負う。A公司が約定通りの義務を負うことのできないときは、B公司がその義務を負う。中国の労務派遣は、当事者間の法関係が非常に複雑である。労働関係の当事者同士のみが労働法令の調整対象とされながらも、非労働関係の使用者と派遣労働者の間にも労働関係あるいは準労働関係的な義務設定がなされている。
●陳さんは、「B公司との労働契約は、A公司に脅迫されて締結した」と主張するが、立証できるのか?「B公司と労働契約しなければ、A公司との労働契約を打ち切る」。A公司のセリフはまったく脅迫の成分がないとはいえないが、立証は難しい。
●B公司労働契約の締結と同時にあったA公司と陳さんとの労働契約の解除行為に違法性はあるのか?陳さんは、別途仲裁または訴訟を通じて権利を主張することになる。違法性の有無にかかわらず、B公司労働契約の有効性に影響しない。
このケースは、A公司の勝訴で終結した。判決は、陳さんとA公司の間に事実上の労働関係の存在を否定し、A公司の正当性を認め、陳さんが主張する「脅迫行為による労働契約の解除と締結」が本案の審理範疇に該当しないとし、陳さんの請求を退けた。
情報提供:
BiZpresso Vol.50 8月5日発行
BiZpresso Vol.50 8月5日発行2008/09/01 更新
立花聡 氏
上海エリス・コンサルティング有限公司 総代表・首席コンサルタント
華東政法大学 法学博士研究生
復旦大学 法学修士
中欧国際工商学院 経営学修士(MBA)
上海エリス・コンサルティング有限公司 総代表・首席コンサルタント
華東政法大学 法学博士研究生
復旦大学 法学修士
中欧国際工商学院 経営学修士(MBA)
プロフィール…1964年生まれ、華僑系日本人。早稲田大学卒、トステム東京本社勤務を経て、英ロイター通信社に入社。94年から6年間、ロイター中国・東アジア日系市場統括マネージャーとして、上海と香港に駐在。00年ロイター退職後、エリス・コンサルティングを創設、代表兼首席コンサルタントを務め、現在に至る
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