コンサルティング 中国
中国はこれまで世界の組立工場であった。部材が中国の工場に運び込まれ、加工・組立し(半)完成品を輸出する。しかし、こうした単純労働作業にお金は落ちない。中国はこのような利益の薄い旨みのない役割を引き受けてきた。
これを可能としたのは、むろん豊富な労働力である。06年の都市の失業率は4.1%、失業者数は847万人になる。失業率自体は決して極端に高いわけではないが、これは都市戸籍者についてのみの数字であり、実際には豊富な労働力の供給源となっている農村戸籍者は含まれていない。
このことに留意すれば、失業の実態は上記数字が与える印象以上のものであるといえよう。ちなみにトレンドとしては、90年代後半は都市の失業率は3%強、失業者数は500万人台の後半であったが、2000年代には同4%強、800万人以上となっている。この豊富な労働力の供給が中国経済をけん引してきたといってよい。
しかしながら、上述したような単純労働作業では労働者が分け前に与ることは難しい。そこで政府が強制的に最低賃金の引き上げやその他の労働者保護政策によって労働者一般に利益を配分することになったわけだが、これは必然的に中国の労働集約型産業の競争力を削ぐこととなる。そうすると、中国における製造業はより高付加価値の製品にシフトしなければならない。
しかし、中国企業にはそれだけの技術や人的・知的資産の蓄積がないことも多く、産業構造の転換は容易ではないであろう。また、外国資本の製造業は、輸出志向であるならば、中国に留まるメリットがない場合も多くなる。この場合、労働集約型産業ではより安価な労働力を求めて製造拠点を移動する事態が想定される。そして、中国における外資のプレゼンスからすれば、そのインパクトは小さくはないと思われる。
中国の製造業は労働集約型産業から技術集約型産業への移行期にあるとみることができるが、必要な人材(熟練工や技術者)は不足しており、しばらくは生みの苦しみを味わうことになりそうである。00年以降、GDPで10%を超える成長を遂げながら、他方で失業率が改善していないのは、このようなミスマッチもその原因の1つではないだろうか。
また、技術の蓄積や技術者の養成には相当期間が必要である。しかし、中国では短いサイクルでの転職が一般であり、技術の蓄積や技術者の養成は容易には進まないであろうし、企業としても安心して人材に投資できないことになる。
いわゆるIT産業の部類であれば、技術の進歩が速すぎて過去の蓄積が問題とならず、また、技術内容の多くは標準化や公開されていることもあり、後発国でもキャッチアップは比較的容易である。それ故、コンピュータソフトウェア関連技術においては、中国もインドと同様にその技術水準は高い。そして、標準化や技術公開のおかげで、企業も人材を他から引っ張ってくることで柔軟に対応することが可能であろう。
しかし、製造業の多くではむしろ事情は異なるのであって、コツ(ノウハウ)や味付けといったニュアンスを帯びてくる分野では、やはり技術の社内での蓄積が重要となってくる。それゆえ、産業構造の移行期において、熟練工や技術者の確保・育成が中国の製造業における人材に関する当面の課題となるであろうと思われる。
ところで、現在、大学卒業者は増加の一途をたどっている。10年も前であれば大学を出れば就職で苦労することもなかったのであろうが、今は全く状況が異なってしまった。00年に95万人であった大学新卒者が07年は500万人にも上ったということである。こうなると一部の名門大学を別にすれば、就職も容易ではない。実際、3割もの学生が就職できないということである。
多くの大学新卒者は都市部でのホワイトカラーを志向する。中国の労働市場ではワーカーの需要は相変わらず大きいが、ここに中国労働市場のミスマッチがある。都市・地方の格差問題からすれば、学生の大都市志向も理解できないではないところである。ワーカーもホワイトカラーも、人材が皆地方から都市へと流入しており、都市部での採用が比較的容易であるが、地方ではそうではないという点も、雇用における地域格差問題の1つの表れであるといえよう。
これを可能としたのは、むろん豊富な労働力である。06年の都市の失業率は4.1%、失業者数は847万人になる。失業率自体は決して極端に高いわけではないが、これは都市戸籍者についてのみの数字であり、実際には豊富な労働力の供給源となっている農村戸籍者は含まれていない。
このことに留意すれば、失業の実態は上記数字が与える印象以上のものであるといえよう。ちなみにトレンドとしては、90年代後半は都市の失業率は3%強、失業者数は500万人台の後半であったが、2000年代には同4%強、800万人以上となっている。この豊富な労働力の供給が中国経済をけん引してきたといってよい。
しかしながら、上述したような単純労働作業では労働者が分け前に与ることは難しい。そこで政府が強制的に最低賃金の引き上げやその他の労働者保護政策によって労働者一般に利益を配分することになったわけだが、これは必然的に中国の労働集約型産業の競争力を削ぐこととなる。そうすると、中国における製造業はより高付加価値の製品にシフトしなければならない。
しかし、中国企業にはそれだけの技術や人的・知的資産の蓄積がないことも多く、産業構造の転換は容易ではないであろう。また、外国資本の製造業は、輸出志向であるならば、中国に留まるメリットがない場合も多くなる。この場合、労働集約型産業ではより安価な労働力を求めて製造拠点を移動する事態が想定される。そして、中国における外資のプレゼンスからすれば、そのインパクトは小さくはないと思われる。
中国の製造業は労働集約型産業から技術集約型産業への移行期にあるとみることができるが、必要な人材(熟練工や技術者)は不足しており、しばらくは生みの苦しみを味わうことになりそうである。00年以降、GDPで10%を超える成長を遂げながら、他方で失業率が改善していないのは、このようなミスマッチもその原因の1つではないだろうか。
また、技術の蓄積や技術者の養成には相当期間が必要である。しかし、中国では短いサイクルでの転職が一般であり、技術の蓄積や技術者の養成は容易には進まないであろうし、企業としても安心して人材に投資できないことになる。
いわゆるIT産業の部類であれば、技術の進歩が速すぎて過去の蓄積が問題とならず、また、技術内容の多くは標準化や公開されていることもあり、後発国でもキャッチアップは比較的容易である。それ故、コンピュータソフトウェア関連技術においては、中国もインドと同様にその技術水準は高い。そして、標準化や技術公開のおかげで、企業も人材を他から引っ張ってくることで柔軟に対応することが可能であろう。
しかし、製造業の多くではむしろ事情は異なるのであって、コツ(ノウハウ)や味付けといったニュアンスを帯びてくる分野では、やはり技術の社内での蓄積が重要となってくる。それゆえ、産業構造の移行期において、熟練工や技術者の確保・育成が中国の製造業における人材に関する当面の課題となるであろうと思われる。
ところで、現在、大学卒業者は増加の一途をたどっている。10年も前であれば大学を出れば就職で苦労することもなかったのであろうが、今は全く状況が異なってしまった。00年に95万人であった大学新卒者が07年は500万人にも上ったということである。こうなると一部の名門大学を別にすれば、就職も容易ではない。実際、3割もの学生が就職できないということである。
多くの大学新卒者は都市部でのホワイトカラーを志向する。中国の労働市場ではワーカーの需要は相変わらず大きいが、ここに中国労働市場のミスマッチがある。都市・地方の格差問題からすれば、学生の大都市志向も理解できないではないところである。ワーカーもホワイトカラーも、人材が皆地方から都市へと流入しており、都市部での採用が比較的容易であるが、地方ではそうではないという点も、雇用における地域格差問題の1つの表れであるといえよう。
情報提供:
BiZpresso Vol.49 7月15日発行
BiZpresso Vol.49 7月15日発行2008/07/25 更新
市橋 智峰 氏 弁護士
プロフィール…東京大学大学院数理科学研究科博士課程退学、数理科学修士。現在、高井伸夫法律事務所上海代表処首席代表。日立製作所社内弁護士、国内法律事務所勤務、復旦大学(中国上海)留学を経て現職。主たる業務分野は知的財産、M&A、国際取引
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