コンサルティング 中国
日本では相変わらず中国産食品を取り巻く環境は厳しい。中国産食品の安全性を巡っては、以前より冷凍ホウレンソウの残留農薬問題など、多くの事例が報告されていた。例のギョーザ事件は幸い死者こそでなかったものの、被害者が一時重体になるなど重大な被害が現実化し、インパクトは従前の事例のそれを遥かに凌駕するものであった。そして、現在も原因究明が進まないことや、調査の過程での中国側の対応なども、日本の消費者が不安を取り除けないことの要因となっていることは否めない。
食品の安全が生命身体の安全に直結する重要問題であることは論を俟たない。しかし、それ故であろうか、ときに反応は過敏となり、冷静さを失うこともある。誤解を覚悟で喩えるならば、嫌煙運動に相通じるところを感じる。嫌煙意識が強まる一方で、喫煙(たばこの消費)の得失の「得」の部分は(知ってか知らずか)顧みられることはない。(喫煙による医療費負担増加が語られても、寿命短縮による年金負担減少には言及されない。これは正当といえるだろうか)。
日本国内では中国産撤去の傾向は続いている。米国から始まった「チャイナフリー」なる言葉は日本でも定着したかのようである。しかし、それは特定企業の営業戦略たり得ても、中国産の家計への貢献を考慮すれば、社会全体で採り得る選択肢では到底あり得ない。
多くの健全な企業もまた被害者である。日本(輸出)向けに関してはほとんどの会社は厳しい品質管理の下、良質の商品を供給しているのではないだろうか。食品、工業製品を問わず、日中双方で生産に携わっておられる日系企業の方に話を伺う機会は多いが、日本国内生産よりもむしろ中国生産の方が品質がよい(不良品が少ない、安全である、などなど)という話を(もちろん相応の理由とともに)聞くことも少なくない。
粗悪品(そしてそれを供給する会社)が淘汰されるべきは当然である。ただし、消費者は個々の商品の品質を知らない。売り手と買い手の間には情報の差(情報の非対称)があるのである。消費者は全体を見渡して品質を判断(推測)することになるが、日本の消費者は中国産というカテゴリーを対象として品質の推測値を下げてしまう。優良企業が割りを食うのは構造的にやむを得ない部分もあるが、だとしても、消費者側に過剰な反応はないだろうか。
ちなみに、平成18年輸入食品監視統計(*厚生労働省)によれば、違反率をみると中国(0.09%)は平均水準にあり、米国(0.12 %)よりも低いそうである。だとすれば、中国産が殊更に危険というわけではないともいえる。日本の消費者の中国産に対する否定的評価は実態以上のもののように思われる。
ところで、品質の過小評価により需要が減少(価格が低下)すると、良品を供給する業者から退場していくことになりかねない(粗悪品を売る業者は安値でも売るであろう)。すると、不良品率がますます上がることにもなる。これは消費者にとっても決してよいことではない。
現在、世界中で中国産食品の安全性に対する懸念が強まっているが、これは中国国内でも同じであり、国民の多くは食の安全に不安を抱いている(実のところ、中国では、輸出向け食品の管理は相当に厳格であり検査体制も整備されている。食品安全政策は、輸出向けと国内向けでは別物であり、真の課題は国内向けの品質向上にあろう)。
重要なのは消費者に判断材料となる情報が流通することであるが、情報には質(信頼性)が伴わなければならない。現在審議中の食品安全法(草案)は、産地・成分などの品質表示、広告の適正化、事故情報などの公開などを内容に含み、これらは情報の質を高めることに資するであろう。ただし、規則・制度は適切に執行されて初めて情報に信頼性を付与することになる。中国政府は食の安全を重視することを表明しているが、今後の法執行に期待したい。
日本国内では中国産撤去の傾向は続いている。米国から始まった「チャイナフリー」なる言葉は日本でも定着したかのようである。しかし、それは特定企業の営業戦略たり得ても、中国産の家計への貢献を考慮すれば、社会全体で採り得る選択肢では到底あり得ない。
多くの健全な企業もまた被害者である。日本(輸出)向けに関してはほとんどの会社は厳しい品質管理の下、良質の商品を供給しているのではないだろうか。食品、工業製品を問わず、日中双方で生産に携わっておられる日系企業の方に話を伺う機会は多いが、日本国内生産よりもむしろ中国生産の方が品質がよい(不良品が少ない、安全である、などなど)という話を(もちろん相応の理由とともに)聞くことも少なくない。
粗悪品(そしてそれを供給する会社)が淘汰されるべきは当然である。ただし、消費者は個々の商品の品質を知らない。売り手と買い手の間には情報の差(情報の非対称)があるのである。消費者は全体を見渡して品質を判断(推測)することになるが、日本の消費者は中国産というカテゴリーを対象として品質の推測値を下げてしまう。優良企業が割りを食うのは構造的にやむを得ない部分もあるが、だとしても、消費者側に過剰な反応はないだろうか。
ちなみに、平成18年輸入食品監視統計(*厚生労働省)によれば、違反率をみると中国(0.09%)は平均水準にあり、米国(0.12 %)よりも低いそうである。だとすれば、中国産が殊更に危険というわけではないともいえる。日本の消費者の中国産に対する否定的評価は実態以上のもののように思われる。
ところで、品質の過小評価により需要が減少(価格が低下)すると、良品を供給する業者から退場していくことになりかねない(粗悪品を売る業者は安値でも売るであろう)。すると、不良品率がますます上がることにもなる。これは消費者にとっても決してよいことではない。
現在、世界中で中国産食品の安全性に対する懸念が強まっているが、これは中国国内でも同じであり、国民の多くは食の安全に不安を抱いている(実のところ、中国では、輸出向け食品の管理は相当に厳格であり検査体制も整備されている。食品安全政策は、輸出向けと国内向けでは別物であり、真の課題は国内向けの品質向上にあろう)。
重要なのは消費者に判断材料となる情報が流通することであるが、情報には質(信頼性)が伴わなければならない。現在審議中の食品安全法(草案)は、産地・成分などの品質表示、広告の適正化、事故情報などの公開などを内容に含み、これらは情報の質を高めることに資するであろう。ただし、規則・制度は適切に執行されて初めて情報に信頼性を付与することになる。中国政府は食の安全を重視することを表明しているが、今後の法執行に期待したい。
情報提供:
BiZpresso Vol.46 6月3日発行
BiZpresso Vol.46 6月3日発行2008/06/24 更新
市橋 智峰 氏 弁護士
プロフィール…東京大学大学院数理科学研究科博士課程退学、数理科学修士。現在、高井伸夫法律事務所上海代表処首席代表。日立製作所社内弁護士、国内法律事務所勤務、復旦大学(中国上海)留学を経て現職。主たる業務分野は知的財産、M&A、国際取引
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