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談談中国潮流第3回:環境保護法制の課題
中国の環境保護関連法規の制定は1970年代末に始まり、80年代の中ごろには法整備が進み、80年末ころには制度的にはある程度確立している。近年は環境汚染問題の解決に向けて更なる法整備を構築している段階にあるといえる。

79年に《環境保護法(施行)》が制定されており、89年12月の改正公布を経て、現在の《環境保護法》となっている。《環境保護法》は環境保護の基本法ともいうべきものであり、環境全般について、環境保護の基本的な原則、制度、法律責任を規定する。

環境汚染防止に向けた法律としては、《大気汚染防治法》、《水汚染防治法》、《環境噪声汚染防治法》などがあり、環境保護と経済発展の調和を図るものとして《清潔生産促進法》、《環境影響評価法》が制定されている。

自然保護に向けた法律としては、《水法》、《森林法》、《土地管理法》などがある。そして、現在までに、20を超える法律以外にも、50余の行政法規、800余の環境標準、1600余の地方法規・規則などが制定されているということである。

また、環境汚染防止のための制度としては、例えば、排汚収費制度(汚染物質の基準超過排出分に対して課徴金を支払う)、環境影響評価制度(開発事業に先立ち環境調査・評価を行い当局の許可を得る)、三同時制度(工場等の施設建設に際して汚染防止施設の設計、施行、使用開始を同時に行う)などが挙げられる。
中国の環境行政のトップは環境保護部であり、その主な業務は環境保護政策、法案の作成である。また、地方各級政府にも中央と同様に環境保護局が設置されており、主な業務は環境汚染の状況把握と防止対策の実施である。

法規・制度の面での基礎は整いつつあるが、問題点も少なくない。中国では環境保護について“守法成本高、違法成本低”(法を守るのはコストが高く、法を守らないのはコストが低い)といわれるが、ペナルティが十分でなく、違法行為のやり得が問題点として指摘されている。例えば、前掲の排汚収費制度などはさほど高額ではない課徴金は逆に汚染企業の免罪符になっているとの指摘もあるところである。

また、法規は基本原則を謳うものや条文の構成が簡単で細かい規定をしていないものも多く、実施細則や地方法規の制定は比較的遅れている。それ故、実際の運用に不都合を生じるか、当局の裁量が入り込む余地が大きい場合も多い。

さらに、環境分野においても法の執行を困難にする要素が地方保護主義である。地方、とりわけ経済が遅れた地域においては経済発展・税収確保のために環境保護を軽視しがちである(地方政府によっては三同時制度、環境影響評価制度を遵守しない例や排汚費(課徴金)を減免したりする例もある。)。また、その点を措くとしても都市部に比較して人材、設備、資金面で格段に劣ることもやむを得ない面がある。(ただし、以上のことは環境分野に限ったことではなく、法制度面一般に当てはまることであろう。)

環境保護部の統計によれば、中国では毎年環境汚染事故が1500から2200起こり、違法案件は2万件を超えるとのことである。制度の整備にもかかわらず、環境汚染には必ずしも有効に歯止めがかかってはいないようである。この点、評価の仕方はさまざまであろうが、中国の市場経済の歴史はまだ浅い。外部不経済(市場の外部に転嫁されたコスト)の内部化の問題は、先進国が市場経済の高度発展段階で取り組んできたいわば応用問題である。

現在の中国は先進的な法制度の導入に積極的であり、他国の制度の“いいとこ採り”ができるという後発の強みもあり、その行方を見る必要がある。ただし、たとえ優れた制度もそれに魂を入れるのも結局は人である。その意味でも環境問題の解決は本連載の第1回で高井弁護士が指摘している公益という価値観にその基礎を置くことになるのであろう。

日本は経済的にも地理的にも中国の環境問題とは無関係ではいられない。現在、中国の環境政策は発展的な過渡期にあるといえる。今後の中国の環境政策に関心を持ち続けたい。
情報提供:
2008/06/24 更新
市橋 智峰 氏 弁護士
プロフィール…東京大学大学院数理科学研究科博士課程退学、数理科学修士。現在、高井伸夫法律事務所上海代表処首席代表。日立製作所社内弁護士、国内法律事務所勤務、復旦大学(中国上海)留学を経て現職。主たる業務分野は知的財産、M&A、国際取引
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